いまさら聞けないボルダリングの基礎知識 クライミングシューズお手入れ編

知っているようで知らないボルダリングの基礎知識を連載形式で解説していく本連載。第8回はクライマーにとっての必須アイテム、クライミングシューズのメンテナンス方法を取り上げる。せっかく買ったマイシューズを長持ちさせるためにはどうしたら良いのか? 今回はクライミングジム「Climb Park Base Camp」で多くの業務を担当し、シューズをはじめクライミンググッズ全般の知識が豊富な松浦圭佑さんに話を伺った。

シューズのメンテナンスは必要?

そもそもクライミングシューズにメンテナンスは必要でしょうか?

必要です。クライミングシューズには"ラバー"と呼ばれるゴムの部分が多いので、メンテナンスを怠ると劣化に繋がります。保管状態で劣化の進行度合いが変わったり、皮の部分に関しては硬化してしまった場合、元の形に戻るのに時間がかかるため、日頃のメンテナンスが大切です。

メンテナンスをサボってラバー部分の性能が落ちると、ホールドに足を置いた時に滑りやすくなってしまったりしてパフォーマンスの低下に繋がります。シューズの状態が良いことは、自分の最大限のパフォーマンスを引き出すために大切なキーポイントだと言えますね。

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ラバー部分にはチョークなどの汚れが付着してしまいがち。

お手入れ方法について

では、基本的なお手入れの方法について教えてください。

クライミングシューズのお手入れには、2つのポイントがあります。

1. ラバーに付いたチョークなどの汚れは、乾拭きで落とす
綺麗な状態で初めて発揮されるシューズのフリクションを保つため、またチョークの汚れはゴムやシューズの接着面に入り込み劣化の原因にも繋がるため、ジムで使用したあとは乾拭きでラバー部分の汚れを拭き取りましょう。シューズバッグ内にタオルや雑巾を入れておくと、メンテナンスを習慣化しやすいですよ。シューズを綺麗に保っておくことで、次に使用する際にもフリクションの良い状態で使用することができ、常にベストなパフォーマンスが発揮できます。少しでも水分が残っていると、雑菌の繁殖につながってしまうため、水拭きは推奨しません。

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2. 使用後には陰干しを
決して通気性が良くはないクライミングシューズ。どうしても汗や匂いがこもってしまうので、使用後に汚れを落としたあとは、日の当たらない場所で陰干しをしましょう。市販の乾燥剤などを入れてあげるのも良いですね。日向に干してしまうと、シューズの皮(合皮部分)が痛みやすくなります。

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シューズの臭いはクライマーにとって悩みの一つでもあると思います。普段から習慣化することで、防げるポイントはありますか?

やはりバッグに入れっぱなしにしないこと。乾燥剤をシューズの中に入れるなどして、汗などの水分が残らない状態を作ってあげてください。また、足裏に汚れが付いている場合もシューズの中で菌が繁殖してしまい、臭いの原因になります。なるべく足が清潔な状態で履くようにすることで、臭い対策、劣化対策ができますよ。最近増えてきているクライミングソックスの着用も有効です。

[臭い対策のポイント]

  1. 陰干し徹底!
  2. 乾燥剤の使用
  3. 足を清潔にしてからシューズを履く
  4. クライミングソックスを履くのも有効
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臭いが気になる場合は、乾燥剤(写真内下)をシューズに入れておくことも忘れずに。
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ラバー部分で、特にお手入れが必要な箇所はありますか?

登る時によく使う、つま先の部分は登りの精度に直結する箇所だと思います。汚れが付着することで、うまく引っかからなかったり滑ったりしまうので、メインで使う箇所という意識を持って汚れを落としてあげてください。

自己流でメンテナンスをしている人も多いかと思いますが、これはやめておいたほうがいいというやり方はありますか?

徹底的に水気をなくしたほうがいいので、液体タイプの消臭スプレーの使用は避けてください。もし臭いが気になる場合は市販の乾燥剤を使用しましょう。水洗いはもっての外です。私もクライミングを始めた当初に、買いたてのシューズを足に馴染ませようとお風呂に持ち込んだことがありますが、痛い目を見ました。水に漬けることでシャンク(ソールと中敷きの間に入っている剛性を高めるもの)が痛んでしまったり、ラバーと表面の皮の接着部分が弱ってしまうんです。

また、粉タイプの消臭パウダーは、リソール(靴底の張り替え)の際に縫い目部分に細かい粒子が入り込み、接着がうまくいかないことが多いので、リソールを検討する場合は気をつけてください。さらに初心者の方によく見られるのですが、かかと部分を踏んで歩くこともシューズの形が崩れてしまうので気をつけてほしいポイントです。

岩場で登る場合、気をつけたほうが良いことはありますか?

岩場でのクライミングのほうがよりシビアな足置きを要求される場合があるので、入念な手入れが必要になってきます。ラバー部分に揮発性の高いスプレー(アルコールの入ったもの)をかけてから乾拭きしたり、ウエットシートで拭くことで精度を上げることができます。泥が付くこともあるので、常に雑巾やタオルを持って行ってください。

岩場に行って、つま先のゴムが削れてしまったことがあるのですが......。

もしかしてジムと岩場で同じシューズを使っていませんか? シューズにはラバーの硬いもの、柔らかいものと様々な種類があるので、一足だけでなく数足持って使い分けてあげると全体の持ちが良くなります。

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2足のシューズを使い分けることも劣化を防ぐ有効な手段となる。
使用頻度が落ちてしまった時のお手入れや保管方法はどうすれば良いですか?

あまり登りに行けない時期などに、シューズバッグにシューズを入れっぱなしの方は要注意です。中で菌が増殖してしまい、臭いの原因になります。なるべく早く取り出し、風通しの良いところに置いてあげてください。

【メンテナンス応用編】

その他、クライミング関連グッズの保管方法もお聞きしたいです。チョークやチョークバッグについては?

チョークもラバーと同じく水気を嫌います。長期間にわたって登るのが難しいシチュエーションでは、一度チョークを取り出してジップロックなどの密封できる袋に移して保管してください。チョークバッグは、チョークの種類を変えるタイミングなどで洗ってあげると良いでしょう。

ブラシは?

ホールドに付いたチョークを落とすためのブラシですが、使い込むことで毛が寄ってしまった場合はハサミなどでカットして毛を揃えるといいでしょう。その部分は、たとえば岩場でポケットになっている箇所を磨くのに使うなど、用途を変えてあげるのがおすすめです。動物の毛を使用している場合が多いので、基本的に水洗いは避けましょう。

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ボルダリングマットはいかがですか?

落下時の衝撃を拡散させるボルダリングマットにも、チョークや泥が付着してしまうことがあるかと思いますが、ブラシで汚れを落とす程度にしてください。中のウレタン素材を傷つけると、長持ちしなくなってしまいます。布団のように叩いたり、衝撃を与えるような汚れの落とし方はNGです。

最後に、シューズの買い替えの時期についても教えてください。

ラバーの下の層が見えてきたら買い替え時期と考えてください。買い替え以外にリソールという選択もあります。リソールのメリットとしては、買い替えるよりも安いこと、新品を履き慣らすまでの時間が短縮されて足に馴染んだ状態から使い出せることが挙げられます。

シューズを長持ちさせるためにも、道具を自分の体の一部として考え、日頃のメンテナンスを欠かさず行っていきましょう。

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  • 松浦圭佑(まつうら・けいすけ)
    世界的クライマー、平山ユージがプロデュースするクライミングジム「Climb Park Base Camp」(埼玉・入間)に勤務。ルートセットやキッズアカデミーなどを担当するほか、The North Face Cupの運営にも携わる。

取材・文:横畠花歩
写真:森口鉄郎/Base Camp提供

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