いまさら聞けないボルダリングの基礎知識 グレード編

知っているようで知らないクライミングの基礎知識を連載形式で解説していく本連載。第6回はボルダリングの難易度を表す「グレード」を取り上げる。○級とか、○段とかよく聞くけど、どうやったら難易度が上がって、どの辺から難しくなっていくの?「初心者が『ボルダリング検定』で5級合格を目指す」シリーズでお馴染み、モデルの葉月蓮さんが、日本で数名しかいない国際資格を持つルートセッター岡野寛さんに話を聞いてきた。

グレードってなに?

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ボルダリングの難易度(グレード)は段級位制で表す。ジムでは写真のように「級」を「Q」に略して表示する場合もある。この場合は1級課題。なお「段」は「D」となる。

Q(葉月):ボルダリングをやっていると"グレード"ってよく聞きますけど、あれは難易度を表すものですよね?

A(岡野):そうですね。ボルダリングは段級位制で、下は大体10級から、上は6段までと言われています。1級まで上がると、その次が初段となり、2段、3段...となります。

Q(葉月):一般的なクライミングジムのグレードは、どれくらいの範囲なんですか?

A(岡野):8級から3段くらいまでのジムが多いと思います。それ以上、例えば5段や6段となると世界のトップクライマーが何度も通って、それこそ何年も通ってようやく登れるようなレベルになってしまいます。そんな難しい課題が一般のジムにあっても誰も登れないですよね(笑)。

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Q(葉月):確かに、そんな難しいのがあったらお客さん来なくなっちゃいますね(笑)。初級者や中級者の目安となるグレードはありますか?

A(岡野):一般的に3級くらいを登れると中級のクライマーで、初段を登れるようになると上級クライマーと言われています。

Q(葉月):初心者の人は、まずどのグレードを目標にすればいいですか?

A(岡野):初心者の方がまず目標にすべきは"5級"になります。5級からいわゆるクライミング的な要素が求められてきます。例えば梯子を登る時は体を真っ直ぐにして、梯子に足を乗せてそのまま上に登っていきますよね。でも5級ではそこから必要に応じて横に振ったり、足を高く上げたり、足の角度を変えたり。あるいはホールドの持ち方でガバやカチ、ポケットなどそれぞれに応じた持ち方が要求されてくるんです。

ホールドの種類の解説はこちら:いまさら聞けないボルダリングの基礎知識 ホールド編
ホールドの持ち方の解説はこちら:ボルダリング上達のコツ!ホールドの基本的な掴み方【前編】

Q(葉月):確かに私がボルダリング検定の5級を受けた時は、なんとなく登ろうと思っても登れないような課題ばかりでした。

グレードの上がり方

Q(葉月):グレードって、課題がどうなると上がっていくんですか?

A(岡野):色んな要素があるので一言で説明するのは難しいんですが、シンプルなところで言えばホールドの掴みやすさや持ちやすさ。それからホールドとホールドの距離によって、届くかどうかというのもあります。そういうところはグレードを作る上でベースになっていきます。一般的にグレードが上がるにつれてホールドが小さくなったり、スローパーなどで持ちどころがなくなってきたり、距離も遠くなっていきます。

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Q(葉月):「この級になるとこういう動きが必要」とか、「こういうホールドが使われるようになる」とか、そういう目安はありますか?

A(岡野):先ほどの初心者が目指すべきと言った5級は、クライミングに必要な動きを練習させる課題が多くなります。なのでこの段階ではホールドが持ちづらくて動けないというものはなく、求められた動きができれば登れるという課題がセットされています。4級に上がると掴みづらいホールドが使われてきて、3級くらいになるとホールドからホールドに飛びつく"ランジ"などダイナミックな動きの要素も入ってきます。そうした要素が合わさって、それぞれのレベルが上がると1級や初段、いわゆる上級者がトライするようなグレードになっていくイメージですね。

Q(葉月):1つグレードが上がると一気に難しくなるっていう感じではなくて、徐々にレベルが上がっていく感じなんですね。

A(岡野):そうですね。やはりある程度グレード間で幅があることは大事だと思います。例えば5級を頑張っている人が4級にステップアップしたいというとき、5級と4級のレベルが完全に分かれていて、5級を完全にマスターしないと4級に上がれないとなると結構大変だと思います。そこで「ちょっとこれ5級っぽい」という4級の課題があると、それを目標に上達して徐々に4級のレベルに上がっていくというほうが登っている人も楽しみながらステップアップしていけると思います。

世界で異なるグレードの呼称

Q(葉月):グレードには段級以外にも種類があるって聞いたんですけど、ほかにもあるんですか?

A(岡野):そうですね。段級はもちろん日本独自の呼び方で、海外にもそれぞれ呼び方があります。例えばアメリカが発祥の "Vグレード"と言って、数字の目にVが付くグレードがあります。それからヨーロッパではフランスが発祥の"フレンチグレード"というのもあります。

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(写真左から)日本、フランス、アメリカのグレード比較。ボルダリングジムにはこのようなグレード表が貼り出されていることが多い。

Q(葉月):色々あってわかりづらそうなんですけど、統一はしないんですか?

A(岡野):やはりそれぞれ使い慣れたグレードというのがあるので統一はしないですね。ただ、換算表があってそれに照らし合わせればVグレードがどの段級に相当するものなのかというのはわかるようになっています。それとグレードは日本だからといって必ず段級を使わなければいけないというわけではないんですよね。Vグレードが好きな人は、自分が初めて登った課題をVグレードで発表する人もいます。

Q(葉月):ちなみに世界で最高のグレードって、どれくらいなんですか?

A(岡野):フィンランドのナーレ・フッカタイバルがV 17と言われる課題を発表しましたが、それはまだ初登者の彼しか登れていないので確定する人が出てきていません。グレードというのは最初に登った初登者が「この課題のグレードはこれだ」というのを提唱して、後から登った人たちがそれを確定していくことで初めてそのグレードが認められるという流れになります。なのでフッカタイバルのV 17というグレードはまだ認められていなくて、認められた最高グレードではV 16がいくつかあります。

Q(葉月):まだ一人しか登れていないからグレードが認められないって、フッカタイバルって本当にすごいクライマーなんですね。

世界のトップ選手たちが登るグレード

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写真:永峰拓也

Q(葉月):TEAM auの野口啓代選手や楢﨑智亜選手も出ているワールドカップや世界選手権とか、世界のトップ選手たちが大会で登るような課題はどれくらいのグレードなんですか?

A(岡野):男子は、特に難しくなる準決勝は全課題が3段くらいのものを用意します。予選は初段から2段、決勝は2段から3段くらいですね。

Q(葉月):女子は少し違うんですか?

A(岡野):女子になるとだいたい1グレードほど下がって、1級から2段くらいだと思います。やはり一番厳しいラウンドの準決勝に2段くらいの課題が出てきますが、制限時間が短いので2段は1課題くらいしか作らないですね。

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初段の課題には、写真のように持ちどころの少ない、一癖も二癖もあるようなホールドが使われてくる。

Q(葉月):初めて見る課題を4分とか5分とか、そんな短い時間で登っちゃうってやっぱり凄いですよね。

A(岡野):凄いですね。ただ、じつはこうしたコンペのときはグレードを決めないことが多いんですよ。グレードは主観的なところもあるので、人によっては登ってみて1段と感じたり、2段と感じたりします。それは経験のあるセッターでも変わってくるところです。コンペでのセットはどちらかというと出場者の顔ぶれを見て、その中で何%の選手が登れるかというのを想定しながら作り、結果的に3段になったというイメージになります。

Q(葉月):選手たちの顔を思い浮かべて、短い時間内で登れそうな課題を作ったら3段とか2段とかになるって、改めてトップ選手のレベルの高さがわかりますね。

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  • 岡野寛(おかの・ひろし)
    日本に数名しかいない、国際資格を持ったルートセッターの1人。W杯やボルダリングジャパンカップ、リード日本選手権など国内外の大会でチーフを務め、今現在も各所からの依頼が絶えない人気セッター。もとは日本代表で、ボルダリングW杯で3位入賞経験も持つ。

※掲載内容は2020年2月時点の情報です。

取材・文:篠 幸彦
写真:鈴木 奈保子
撮影協力:DOGWOOD 調布店

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