コンバインドでTEAM auが世界を席巻!楢﨑智亜が金、野口啓代も銀/IFSCクライミング世界選手権2019

8月21日、IFSCクライミング世界選手権(東京・八王子)が11日間にわたる熱戦の幕を閉じた。世界選手権は2年に1度行われるスポーツクライミング界で最も権威ある大会で、日本では初開催となる。TEAM auからは野口啓代、伊藤ふたば、藤井快、楢﨑智亜、楢﨑明智の全員が参戦し、今大会の最終種目、スピード、ボルダリング、リードの3種目の複合成績で争うコンバインドでは5選手がそろって決勝に進出。女子で野口が銀メダルを、男子で楢﨑智亜がボルダリング単種目に続く今大会2つ目の金メダルを獲得した。

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女子コンバインド

コンバインド女子決勝は20日午後に開催。野口、伊藤、森秋彩、野中生萌が進出し、ファイナリスト8名のうち4名が日本人選手となった。トーナメント方式で行われる第1種目のスピードでは、初戦で野口と野中が激突する。緊張した面持ちで登場した野口は、ほぼ互角の戦いとなったレースの終盤で足をスリップさせてしまい敗退。同じく初戦で敗れた伊藤、森とともに敗者によるトーナメントに回った。ここで伊藤は連勝して5位、野口は7位、森は8位となり、野中は勝者によるトーナメントで2敗を喫して4位スタートとなった。

続くボルダリングは、上位を取るしかない野口が第1課題で底力を発揮。パワーとテクニックを駆使し、会心の一撃(1トライ目で完登)を決める。さらに第2課題も2トライでクリアし、第1課題を完登した森とショウナ・コクシー(イギリス)がゴール前で力尽きたため、1完登差の首位で第3課題を登り切ればこの種目1位が決まる展開に持ち込んだ。最終関門は、横移動した先のゾーンを掴めるかどうかが肝の緩傾斜課題。完登したい野口だったが、バランス取りに大苦戦してゾーンまでたどり着けず、順位は後続の結果次第となる。しかし完登で逆転1位のチャンスがあったヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)、野中、コクシーはいずれもゾーンなしで終了。野口が1位を獲得し、総合ポイントをコクシーと1差の7ポイント(スピード7位×ボルダリング1位)として日本人トップの2位に浮上した。

最終種目のリードは、先頭で登場したリード単種目の銅メダリスト、森が魅せる。持ち前の持久力で粘り強く高度を上げていくと、ゴール取りのランジにも成功して完登。15歳の奮闘に会場から歓声とどよめきが沸き起こった。その後、伊藤が高度27、野中が23+にとどまり、この時点の暫定順位で野口の日本人1位が確定。7番手で登場した野口は大歓声を後押しにみるみる高度を上げてTOP目前まで到達し、ゴール取りで試みたランジは惜しくも掴み切れなかったが、この種目暫定3位につけた。

最終競技者のコクシーは高度20に終わり、総合順位が確定。森の到達時間を上回る完登でリード1位となったガンブレットが今大会3つ目となる金メダルを獲得し、2位に野口、3位にコクシーが入った。野中は5位、森は6位、伊藤は7位。この結果により、野口は念願だった日本人最高順位となり次のステージに向けて、目に涙を浮かべて会場の拍手に応えた。

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男子コンバインド

大会最終日となった21日の男子決勝には楢﨑智亜、藤井快、楢﨑明智、原田海の4選手が進出。女子同様ファイナリストの半数を日本人が占めた。大会前の会見で「世界一を狙いに行く」と公言していた楢﨑智亜が、第1種目のスピードから圧巻のパフォーマンスを披露する。明智との兄弟対決を制して迎えたミカエル・マエム(フランス)との一戦は、互いにミスのないハイレベルなレース展開に。勝ったのは最後に一手先を行った楢﨑で、マエムの6.313秒に対して6.159秒を計測して自身の持つ日本記録を更新した。1位を決めるビッグファイナルではスリップしてリシャット・カイブリン(カザフスタン)に敗れたものの、上々の2位発進となった。

続くボルダリングでも、その勢いは止まらない。ゾーン後の足場が悪く、先に登った選手たちが完登を逃していた第1課題を、最初のトライから下半身がブレることなく一撃。難しいゴール取りの第2課題も2トライで落とすと、他7選手が0完登だったため、第3課題を前にこの種目1位が確定する。最後も完登で締めくくった楢﨑は2ポイント(スピード2位×ボルダリング1位)で総合首位に立った。

最終種目のリードは、1番手で完登したヤコブ・シューベルト(オーストリア)以外、終盤にさえたどり着けない状況が続き、原田は高度30、藤井は29+、楢﨑明智は21で終える。最終競技者の楢﨑智亜は原田と同じ高度30でフォールしたが、到達時間で上回り2位でフィニッシュした。

この結果、スピード2位、ボルダリング1位、リード2位と全種目で高次元のパフォーマンスを維持した楢﨑智亜が自身初のコンバインド世界王者に輝いた。同時に、今シーズン最大の目標に掲げていた世界選手権優勝を達成した。2位には前回王者のシューベルト、3位にはスピード1位に加えてリードでも健闘したカイブリンが入り、4位に原田、5位に楢﨑明智、6位に藤井と続いた。

これで初の日本開催となったIFSCクライミング世界選手権の全日程が終了。最終日には君が代が鳴り響き、TEAM auの野口啓代と楢﨑智亜の2人は次のステージに向けて新たなスタートを切る。

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<野口啓代選手 コメント>
本当に夢のようでまだ信じられない。スピードではみんな緊張していて、日本人選手全員でミスしてしまった。落ち込んでいたけれど、私はスピードで勝負する選手ではないし、タイム的には6位での全体7位だったのでそれほどダメージは受けなかった。とにかくボルダリングで1位を取りたいということだけを考えていた。
(そのボルダリングでは)自分でもびっくりするくらい登っているときに落ち着いていて、今シーズンで一番良い登りができたと思う。コンバインドの中でだが、今年初めてボルダリングで1位を取れたことは大きかった。リードは完登したヤンヤ(・ガンブレット)や(森)秋彩ちゃんと比べて、ゴール取りの時点で疲れていたので完登する余力はなかった。終了点の一手前まで行けただけでも奇跡的だったと思う。
どの種目でも本当に声援がすごくて嬉しかった。来年に向けては全種目の実力を上げなければいけない。コンバインドのリード課題はそれほど難しくないので、完登すればタイムで勝てる可能性もある。スピードが苦手なので、まだまだ強化しなければいけないと思う。

<伊藤ふたば選手 コメント>
スピード1回戦では緊張して、手も震えてうまくいかなかった。自分はスピードで良い順位を取らなければいけないので、そこで失敗してしまったのが今回の敗因だと思う。今大会は(今年5月の)コンバインドジャパンカップのときのように、スピードの失敗をボルダリングに引きずるようなことはなかった。決勝を全力で楽しもうと臨んでいたので、スピードの後も楽しんでやろうと頑張って登った。
ボルダリングで強い選手というのはゴール取りまで行けたら決め切る力があるけれど、自分にはそれが足りない。(野口選手について)決め切るところはしっかり決め切るし、最後のリードの登りを見ていてもすごく感じるものがあった。

<楢﨑智亜選手 コメント>
こんなにうまくいくとは思わなかった。びっくりしてはいるが、今日が一番、体の状態は良かったと思う。感覚的にも優勝できると思っていた中での優勝だった。最初のスピードで流れに乗れた。1回戦の相手が(弟の楢﨑)明智だったことが僕にとっては良かった。いつも通りの相手だったので落ち着いて臨むことができた。明智とは勝っても負けても恨みっこなしと話していた。野口選手に言われたのが、コンバインドは本当にメンタルの勝負だということ。最後まで気持ちを切らさない人が勝つと。その通りだなと思った。
(今後の強化について)ボルダリングは、できない課題を少なくしていくこと。リードは、ミスが出ないようにオブザベーションができるようにすることと、単純に持久力をつけること。(なかなか勝てなかった日本開催の大会で2冠を獲得できたことについて)一気に呪縛が解けた気がする。一番大きい舞台でこうして勝てたことが嬉しい。

<楢﨑明智選手 コメント>
チャンスを逃してしまった。リードはアップの段階では調子が良さそうだったので、けっこういい高度まで行けると思っていた。力を出し切れなくてすごく悔しい。(リードで落ちた場面について)ヒールフックをつま先に変えるときにロープに足が入って絡まってしまった。僕は表彰台を狙っていたので、それを逃してしまったことが悔しい。クライミングをやっていてこんなに悔しいのは初めてだった。絶対に強くなろうと決めた。智亜を倒せるのは明智しかいないと言われるくらいに強くなりたい。ボルダリングで順位を稼げて、スピードでは自己ベストが出せたので、トゥールーズ(フランス)の予選大会に出場できるならば、そこに向けて自信になると思う。

<藤井快選手 コメント>
残念。それに尽きる。最初のスピードから展開が悪かった。ボルダリングで挽回しようと頑張ったが叶わず、という感じだった。自分のトレーニング不足というか、実力不足だとあらためて感じた。スピードはミスが多くて、体と気持ちがズレているというのもあった気がする。緊張もしていたし、最近は上部でのミスが多くてそこの不安もあった。3レースやって2回同じようなミスをしたので、不安を最後まで消し切れなかったんだと思う。
ボルダーもリードも100%出せたかというとわからない。引き出せる範囲では引き出していたつもり。今大会で感じたのは、全種目において自分はまだまだ勝負ができないということ。安定した順位が出せても、その先は周りの順位に依存する展開になっていた。すべてにおいてベースアップしないと金メダルというのはまだまだ遠いと感じた。

<コンバインド 女子決勝>
1位:ヤンヤ・ガンブレット(SLO) 12ポイント(S 6位/B 2位/L 1位)
2位:野口 啓代 21ポイント(S 7位/B 1位/L 3位)
3位:ショウナ・コクシー(GBR) 42ポイント(S 2位/B 3位/L 7位)
4位:アレクサンドラ・ミロスラフ(POL) 64ポイント(S 1位/B 8位/L 8位)
5位:野中 生萌 80ポイント(S 4位/B 4位/L 5位)
6位:森 秋彩 80ポイント(S 8位/B 5位/L 2位)
7位:伊藤 ふたば 120ポイント(S 5位/B 6位/L 4位)
8位:ペトラ・クリングラー(SUI) 126ポイント(S 3位/B 7位/L 6位)

<コンバインド 男子決勝>
1位:楢﨑 智亜 4ポイント(S 2位/B 1位/L 2位)
2位:ヤコブ・シューベルト(AUT) 35ポイント(S 7位/B 5位/L 1位)
3位:リシャット・カイブリン(KAZ) 40ポイント(S 1位/B 8位/L 5位)
4位:原田 海 54ポイント(S 3位/B 6位/L 3位)
5位:楢﨑 明智 60ポイント(S 5位/B 2位/L 6位)
6位:藤井 快 72ポイント(S 6位/B 3位/L 4位)
7位:ミカエル・マエム(FRA) 112ポイント(S 4位/B 4位/L 7位)
8位:アレクサンダー・メゴス(GER) 448ポイント(S 8位/B 7位/L 8位)

※上段左から順位、氏名、所属国
※下段左から各種目順位の値を掛け合わせた総合ポイント、各種目順位(S=スピード、B=ボルダリング、L=リード)
※同ポイントの場合、順位が上回った種目数の多い選手が上位。

取材・文:CLIMBERS編集部
写真:JMSCA/アフロ

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