楢﨑智亜がボルダリング世界王者に返り咲き!/IFSCクライミング世界選手権2019

8月11日、東京・八王子でIFSCクライミング世界選手権が開幕した。世界選手権は2年に1度行われるスポーツクライミング界で最も権威ある大会で、日本では初開催となる。TEAM auからは野口啓代、伊藤ふたば、藤井快、楢﨑智亜、楢﨑明智の所属5選手がそろって参戦し、13日のボルダリング決勝では楢﨑智亜が2016年以来、自身2度目の優勝を成し遂げ、女子では野口が前回大会に続く銀メダルを獲得。続いて行われた15日のリード決勝では野口が5位、楢﨑智亜が4位にそれぞれ入賞を果たした。

ボルダリングハイライト

女子ボルダリング

13日午後、今大会初の王座を懸け、女子ボルダリング決勝が行われた。同日午前の準決勝は完登数が少ないシビアな展開の中、ボルダリングワールドカップ2019の年間チャンピオン、ヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)と野口が格の違いをみせて1位、2位で通過。TEAM auの伊藤はゾーン獲得数が1つ足りず、惜しくも準決勝敗退となった。

迎えた決勝は最終第4課題まで優勝争いがもつれる展開に。5番手で登場した野口は、最後の力を振り絞り、ここぞという場面で執念の一撃(1トライ目で完登)を決める。暫定5位から一気に1位へと駆け上がり、最終競技者ガンブレットの結果を待つことになった。しかしゾーンさえ掴めば優勝のガンブレットは、ここでも危なげない登りを披露。着実にゾーン、そしてトップを掴み取り、2大会連続の優勝を手繰り寄せた。1位ガンブレット、2位野口は昨年のインスブルック(オーストリア)大会と同じ結果で、3位にはショウナ・コクシー(イギリス)が入っている。

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男子ボルダリング

13日午後の準決勝を終えてファイナリスト6名が決定。日本からは楢﨑智亜、藤井、土肥圭太の3名が進出した。TEAM auの楢﨑明智は13位で準決勝敗退となった。

決勝は楢﨑智亜の独壇場となった。楢﨑得意の連続した動きを繰り出すダイナミックな第1課題と、掴みどころの少ない巨大ホールドにいかに飛び乗るかがカギとなった第3課題の2つを完登。2位以下が完登者ゼロという難関課題の決勝で、他選手に大差をつけて2大会ぶりの栄冠に輝いた。藤井はゾーン獲得アテンプト数の差に泣き4位。最大のライバルと目されていたアダム・オンドラ(チェコ)はまさかの0完登0ゾーンで決勝最下位に終わった。

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リードハイライト

女子リード

大会5日目となる15日、女子リード決勝には日本から15歳の新鋭・森秋彩と野口が進出。3番手で登場した野口は38+の好記録をマークし、表彰台圏内に入る。準決勝3位の森は中間部の2つハリボテが並んだゾーンで苦戦するも、大声援を後押しに上位陣の高度へと迫っていく。しかし暫定1位のミア・クランプル(スロベニア)の記録にあとわずかというところで力尽き、38+で競技を終えた。

最終競技者は準決勝1位のヤンヤ・ガンブレット。一昨日のボルダリング優勝で勢いを増すガンブレットは、左右を辿る複雑な決勝ルートにも迷うことなく突き進んでいく。順調なペースで最終面に達すると、暫定トップの39+も超え、TOP直前まで迫る43+でフォール。これでガンブレットは今大会2種目制覇を達成した。クランプルが2位、世界選手権初出場の森は3位に入り日本人最年少表彰台という記録も達成した。野口は5位でのフィニッシュとなり、TEAM auの伊藤は14位で準決勝敗退となった。

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男子リード

女子決勝に続いて行われた男子決勝。ファイナリスト8名に名を連ねた日本人は今大会好調を維持する楢﨑智亜と前回大会のボルダリング王者の原田海。準決勝に進出したTEAM auの楢﨑明智と藤井は決勝進出ラインである高度29+に届かず、それぞれ12位と14位で準決勝敗退となった。

実力伯仲のファイナルで、先ずは前回大会のリード王者が魅せる。3番手に登場したヤコブ・シューベルト(オーストリア)が終盤の高度33+に到達し、トップに立った。そして5番手のアダム・オンドラ。ボルダリング決勝で何もさせてもらえず、巻き返しを図りたい世界最強クライマーは順調に高度を上げて34+でトップを奪取。7番手で登場した楢﨑はもはや定番となった高速の登りで上部に迫るが、次第に体力を奪われ、高度30でフォール。暫定3位となり、表彰台は最終競技者アレクサンダー・メゴス(ドイツ)の結果次第となった。メゴスは楢﨑とは反対にゆっくり着実にムーブを起こしていく。楢﨑の落下したホールドにも耐えきって、最後は33+まで到達。これでオンドラの優勝が決定し、2014、16年に次ぐ3度目の世界選手権リード制覇となった。2位はメゴス、3位はシューベルトで、2大会連続で同じ顔触れが表彰台に並び立った。楢﨑は4位、原田は7位に終わり、ともに世界選手権リード種目の自己最高位を更新した。

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<楢﨑智亜選手 コメント>
(13日:ボルダリング決勝を終えて)
ようやく日本で優勝できた。ボルダリングジャパンカップでも優勝できていなかったので、一番大きな舞台で優勝できてよかった。第1課題を完登した時点でかなり流れが自分に来ていて、第3課題を完登したときにはこれで決まったという感じだった。アダム(・オンドラ)がゾーンを1つも取れないのは予想もしていなかった。ボルダリングはあらためて課題次第だなと思った。

(15日:リード決勝を終えて)
予想ではよりボルダーチックになったパワフルなルートになると思っていたが、細かいホールドが続いてきつかった。落ちたところは前腕がかなりきつくて、ヒールをするか、膝を入れるか迷っているうちに前腕に限界がきてしまった。リード4位は去年より高い成績だがなんとも言えない。ただ、世界選手権のリードで決勝まで残れたのは初めてで、予選から大きなミスもなく、そこはコンバインドに向けて安心できる材料だと思う。これでスピードは最下位でもコンバインドに進めると思うので攻めることができる状況だが、どちらかというと感触を確かめるラウンドにしようと思っている。調子が良ければもしかしたら記録も狙うかもしれない

<藤井快選手 コメント>
(13日:ボルダリング決勝を終えて)
2課題目のゾーンを取れなかったことが表彰台に上がれなかった大きな要因。全課題すごく難しかったので、かなり精神的にきついファイナルだった。楢﨑君しか登れなかったので、ハードな中にも彼の高いポテンシャルを引き出すような課題だったのかなと思った。

(15日:リード準決勝を終えて)
落ちたところは単純に疲れていて押さえきれなかった。内容があまりよくなかったので少し不安が残る形になってしまった。明後日のスピードはスタートが苦手だったので重点的に練習してきた。そこをうまく出せれば6.2秒台は出せると思う。明後日はそこを目標にしてタイムが出せればコンバインドへの自信になる。

<楢﨑明智選手 コメント>
(13日:ボルダリング準決勝を終えて)
久しぶりに準決勝を楽しめたのでよかった。ここ最近思っているのは、フィジカル要素を発揮するには頭がうまく使えなければ難しいということ。今回は日本開催ということもあって、知っている人たちもたくさん観てくれていて、自分の出来が悪くてもしっかりと登ると決めていた。それができたので登っていて楽しかった。

(15日:リード準決勝を終えて)
課題の相性は合っていたと思っていて、落ちたポイントでも余力はあった。ただ、体のポジションが悪くて最後の一手まで頑張れなかったという印象。ここまでの順位であればスピードで大きなミスをしなければコンバインドへは進めるとコーチから言われている。でもあまりそこは気にせず、次のスピードでは自己ベストを目指して頑張りたい。

<野口啓代選手 コメント>
(13日:ボルダリング決勝を終えて)
去年の世界選手権も今年のW杯も全部2位なので、またシルバーコレクターを更新してしまった。ヤンヤ(・ガンブレット)も全部を登って優勝したわけではないので、自分が2課題目か3課題目を登れていれば優勝の可能性があった。単純にそこを登る力が足りなかった。私が競技を続けてきた中でもヤンヤほど強い選手はいなかった。特にボルダリングとリードの2種目は世界最強だと思うので、本当にすごい選手だと思う。

(15日:リード決勝を終えて)
決勝では準決勝より良い登りができたと思う。自分のパフォーマンスにはすごく満足している。ただ、カウントバックで5位と、表彰台まであと一手の差だと思うとすごく悔しい。最後は疲れて落ちてしまった。下部や最終面はそれほど苦手ではなかったが、最後の傾斜がなくなってじわじわと登る箇所は得意ではなかった。最後のパートはすごく歓声も聞こえましたし、盛り上がっている時点で前の選手たちより上部にいっているんだなというのは感じていた。この成績でコンバインドの20位以内には入っていると思うので、あとはもうコンバインドで頑張りたい。リードもボルダーも納得するパフォーマンスができた。明日は1日レストで、明後日もスピードしかないのでコンバインドに向けて明日明後日で回復できると思う

<伊藤ふたば選手 コメント>
(13日:ボルダリング準決勝を終えて)
2課題目で3回もゴール落ちしてしまったので、あそこを決め切れなかったのが敗因になったと思う。4課題目のゾーンを取れたら(決勝に)残れることはわかってはいなかったが、みんな登れていないのは歓声でわかっていた。ゾーンを取っておけば決勝進出の可能性は高いと思って頑張ろうと登った。決勝に行って表彰台も狙っていたので悔しい。

(15日:リード準決勝を終えて)
今シーズンのリードW杯では準決勝で力を出し切れないことが多かったが、今回は出し切ることができて満足する登りができた。明後日のスピードは安定して9.2秒くらいのタイムを出せるようになってきているので、それをしっかり出すようにして、(出場できれば)コンバインドの予選、決勝ではベストを出せるように頑張りたい。

<ボルダリング 女子決勝>
1位:ヤンヤ・ガンブレット(SLO)/3t3z 8 8
2位:野口 啓代/2t2z 4 2
3位:ショウナ・コクシー(GBR)/2t2z 6 6
4位:イエブゲニヤ・カズベコワ(UKR)/1t2z 3 4
5位:野中 生萌/1t2z 5 6
6位:倉 菜々子/0t1z 0 1
―――――
7位:伊藤 ふたば ※準決勝進出

<ボルダリング 男子決勝>
1位:楢﨑 智亜/2t4z 12 20
2位:ヤコブ・シューベルト(AUT)/0t3z 0 10
3位:ヤニック・フローエ(GER)/0t3z 0 13
4位:藤井 快/0t3z 0 18
5位:土肥 圭太/0t2z 0 9
6位:アダム・オンドラ(CZE)/0t0z 0 0
―――――
13位:楢﨑 明智 ※準決勝進出

※左から氏名、所属国、成績
※成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数

<リード 女子決勝>
1位:ヤンヤ・ガンブレット(SLO)/43+
2位:ミア・クランプル(SLO)/39+
3位:森 秋彩/38+ ※準決勝3位
4位:ソ・チェヒョン(KOR)/38+ ※準決勝5位
5位:野口 啓代/38+ ※準決勝6位
6位:ジェシカ・ピルツ(AUT)/35+
7位:ヴィータ・ルーカン(SLO)/30+ ※準決勝2位
8位:ジュリア・シャノーディ(FRA)/30+ ※準決勝8位
―――――
14位:伊藤 ふたば ※準決勝進出

<リード 男子決勝>
1位:アダム・オンドラ(CZE)/34+
2位:アレクサンダー・メゴス(GER)/33+ ※準決勝1位
3位:ヤコブ・シューベルト(AUT)/33+ ※準決勝6位
4位:楢﨑 智亜/30 ※準決勝2位
5位:ショーン・マッコール(CAN)/30 ※準決勝3位
6位:ステファノ・ギソルフィ(ITA)/29+
7位:原田 海/28+
8位:ハネス・プーマン(SWE)/27+
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12位:楢﨑 明智 ※準決勝進出
14位:藤井 快 ※準決勝進出

※左から氏名、所属国、成績(到達高度)

取材・文:CLIMBERS編集部
写真:窪田亮

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