藤井 快インタビュー

まずは日本一、そして世界へ 昨日の我に今日は勝つべし

スピードジャパンカップ2位、リードジャパンカップ優勝と、好スタートを切った2019年。本人も実感するパフォーマンス向上の裏には、昨年から取り組む肉体改造の成果があった。「自分に勝つ」、その先に――。進化を止めない藤井快が目指すのは、5月のコンバインドジャパンカップ、そして8月に開催される世界選手権の王座だ。

自己ベスト更新!スピード強化も着々と

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<SJC2019 写真:JMSCA/アフロ>
今季最初の一戦となった1月のボルダリングジャパンカップ(BJC)は6位。残念ながら4連覇は叶いませんでしたが、この結果をどう受け止めていますか?

「もちろん優勝は目指していましたが、そこまで4連覇には固執せずシーズン最初の試合として、今の自分の調子を知るという気持ちで臨みました。3連覇を達成できた昨年大会はしっかり狙って、流れをたぐり寄せて勝ちにいきましたが、そういう勝ち方をすると、どうしてもそこをピークに次でパフォーマンスが落ちてしまう。今はまだベースアップを図っているタイミングです。大会を通して、自分の苦手な部分や弱点がわかりやすく出てくれたのはよかったと思っています」

弱点とは、具体的には?

「スラブ(緩傾斜)とプッシュの動きですね。不安定なポジションの時にどこからどこまでの範囲を自分が苦手としているのか、かなり細かく把握できました。今後に向けてすごくいい材料をゲットできたと感じています」

 続く2月のスピードジャパンカップ(SJC)では2位。この好成績の要因は?

「1月にインスブルック(オーストリア)でスピードとリードの合宿をした際、手動計測ではありますが6秒台を出せるようになって、パフォーマンスが上がっている実感はありました。帰国後は昭島(東京)でトレーニングをしていましたが、ヨーロッパで掴んだ感覚とは違い、壁のコンディションや気温、風などの環境の違いにアジャストするのが難しかったですね。最終的には大会に向けてうまく調整できました」

 決勝トーナメントに最下位(16位)で進出した藤井選手が連勝を重ね、大会を大いに盛り上げてくれました。

「目標は公式大会で6秒台を出すことでした。それが達成できた(準決勝で6秒92の自己ベストを記録)のは自信になりましたね。ただ6秒台を出したことによって若干満足感があって、決勝では集中力が途切れてしまい、ミスを連発してしまいました」

ウエイトトレーニングの効果、コンバインドの手ごたえ

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<世界選手権2018 写真:窪田美和子/アフロ>
 昨シーズンを振り返って、得たもの、感じたことはありますか?

「ボルダリングW杯では結局、優勝した1大会を含め2回しか決勝に行けなかったので、全然満足いくものではありませんでした。1年ほど前からトレーナーと相談しながら、新しいトレーニングを取り入れたシーズンでもありました」

 具体的にはどのようなトレーニングを?

「これまでは『トレーニング=登ること』という感覚でしたけど、昨年から基礎的な身体能力を向上させるためにウエイトトレーニングを取り入れました。本格的に取り組むのはほとんど初めてだったので、かなりインパクトがありますね。ある程度の時間をかけないと体は変わっていかないので、すぐにはパフォーマンスは上がってきませんでしたが、1年経ってようやく自分がやりたいことに筋肉が順応してくれている感覚があります」

 徐々に成果が出始めているのですね。

「大会の結果に限らず、普段の登りの感覚も良くなっています。体重はあまり変わっていませんが、見た目にも変化は感じていますし、必要なところに必要な筋肉がついて、不要なところが落ちた感じですね。筋肉の量というよりは質を大切にしています」

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 昨年から本格的に取り組まれたコンバインド(3種目複合)に関して、現状の手ごたえはいかがですか?

「コンバインドはリードが強い選手が強い。スピードはフライングやミス一つで順位がごろっと変わってしまいますし、ボルダリングも課題のタイプによって誰が勝つか変わりやすい。実力が出やすいリードを強化して安定感を求めるほうが、コンバインドで決勝に残るという意味では重要だと考えています。そこから先は、ボルダーとスピードでミスをせず集中力を高めて結果を出せば、優勝もあると思っています」

 今年8月には世界選手権が日本で初めて開催されます。

「その前に5月に行われるコンバインドジャパンカップ(CJC)ですね。この大会が世界選手権への選考大会になるので、ある意味で今年最大のピークというか、大切なポイントです。単種目のジャパンカップでいい成績を出していても、コンバインドはまた別物です。世界選手権に出場するために、まずは日本人同士の争いでしっかり強いところを見せなければなりません」

支えてくれる仲間、家族がいる

 TEAM auも3年目を迎えましたね。

「みんなすごく仲がいいですよ。楢﨑兄弟はもちろん、野口(啓代)さんも(伊藤)ふたばちゃんも姉妹みたいですし。僕だけちょっと違うジャンル感がありますよね(笑)」

 そんなことないと思いますけど(笑)。日本代表チームでも一緒に過ごす時間が多いですよね。

「やはりみんな一流の選手なので、結果を求められている場面では確実に勝っていきます。実績を出し続けるというのは凄いことだと思います。自分も負けてられないですし、いい刺激を受けていますね」

 藤井選手はTEAM au唯一の妻帯者。結婚生活はいかがですか?

「年末年始は海外遠征にほとんど行かなかったので、家でごはんを作ったり、作ってもらったり、ゆっくり過ごすことができました」

 藤井選手が作るのですか?

「そうですね。今は僕の方が時間があるので、トレーニングが終わったら、ごはんを作って妻の帰りを待ってたりしますね」

 奥様に好評な得意料理は?

「なんですかね......和食かな。出汁(だし)を取るのがちょっと好きになってきています(笑)」

 出汁ですか!?

「はい、昆布とカツオで出汁を取って煮物とか。一度おでん作った時はめちゃくちゃ美味しくできたなって思いましたけど(笑)」

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 藤井選手は"会社員クライマー"と紹介されることもあるように、B-PUMP TOKYOでジムスタッフとして勤務もされていますが、現在はどう両立しているのですか?

「3種目に取り組むとなると練習時間の絶対量が必要になるので、勤務している時間自体は少ないです。週に1回は必ず店頭に立つようにしていますが、ルートセッティングや受付が中心ですね。『もうあがっていいよ』と声をかけてもらったり、会社や他のスタッフにサポートしてもらっています」

 トレーニングの合間にジム勤務することは、リフレッシュになったりも?

「そうですね。僕は金曜日勤務が多いのですが、金曜日に日本代表の練習会などが入ってしまうと『あぁ、お店に行けない、残念だな』と思ったりもします。あと、ルートセットが楽しいですね。お客さんが自分の作った課題を登ってくれると嬉しいですし、課題の感想を聞けるのも楽しみです。後輩の話を聞いたり、何気ないことを含めてお店に関われていることが、すごくありがたいですね」

 あらためて2019年シーズンの目標を教えてください。

「まずは5月のコンバインドジャパンカップで結果を出すこと。最低でも決勝進出。それが達成できれば、世界選手権に繋がってきます。日本開催でかなりアドバンテージがあると思っているので、単種目でもコンバインドでも結果を残したいです。僕のモチベーションには"対人"よりも"対自分"というのがすごく大事なので、そこはブレることなく、過去の自分を塗り替えるようなベストな登りができるようにしたいと思っています」

 最後に、ファンのみなさんへのメッセージをお願いします。

「自分が競技に集中すればするほど、支えてくださる方々の協力で競技ができていることを実感しています。今年、来年とビッグイベントが待ち構えているので、この2年間、全力で頑張っていきます。これからも応援よろしくお願いします!」

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※このインタビューは2019年2月16日に収録されました。

インタビュー・文:CLIMBERS編集部
写真:永峰拓也
撮影協力:B-PUMP 荻窪店

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