伊藤 ふたばインタビュー

シニア1年目の経験を糧にニューヒロインは新たな次元へ

念願のW杯に初参戦した2018年。立ちはだかるシニアの壁に苦しみながらもひたむきに取り組んだ1年を経て、伊藤ふたばは確かな手ごたえを掴んでいた。14歳でボルダリングジャパンカップ史上最年少優勝を果たしてから2年。メンタルも、フィジカルも、さらに力強く変貌を続ける16歳から、目が離せない。

小さい頃から憧れたW杯の舞台へ

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<BJC2019 写真:松尾/アフロ>
ボルダリングジャパンカップ(BJC)は3位、続くスピードジャパンカップ(SJC)では2位。2019年は2戦連続の表彰台でスタートを切りましたね。

「どちらも安定して表彰台に乗ることができて、最低限の成績は残せたと思いますが、BJCもSJCも優勝の可能性はあったので悔しさが残りますね」

昨年は念願のW杯へ初参戦するなど、様々な経験をされたと思います。

「去年は本当に何も知らないところにいきなり出ていったので、初めての経験をたくさんすることができました。今年は去年の経験があるので、W杯では最初から上位を狙っていきたいと考えています」

あらためて、2018年はどんなシーズンでしたか?

「初戦の時は、『自分があのW杯に出ているんだ』という感覚が強すぎて少しフワフワしてしまい、思うように登ることができませんでした。でもそこから立て直すことができて、モスクワ大会で8位、八王子大会では決勝に残って6位に入ることができました。ただ、決勝を狙える大会が他にもあった中で、決勝進出が八王子のみだったのは反省点です。でも本当に良い経験ができましたし、成長もできたのかなと思いますね」

どのような点で成長を感じていますか?

「試合に臨む気持ちの作り方だったり、ムーブの読みだったり。特に(ボルダリング1課題の制限時間である)5分間の使い方はうまくできるようになりました」

野口啓代選手を参考にされた部分もあったのですか?

「時間の使い方は自分のタイミングですし、気持ちの作り方も自分の中で見つけていくものだと思うので、参考にするというよりは大会で経験を積んでいく中で自分に合うものを探していきました」

ユースとシニアの大会で差を感じた部分は?

「ヤンヤ(・ガンブレット)、啓代ちゃん、(野中)生萌ちゃんっていう、表彰台にずっと上がっているようなトップの選手たちはだいたい決まってきているんですけど、その下は誰が決勝に残るかわからないほど層が厚い。みんなが決勝を狙ってきているという気持ちの貪欲さは、ユースと違って大きいと実感しています。あとはホールドの距離感もまったく違いましたね。やっぱり遠かったです」

世界を転戦して、特に気に入った国や街はありますか?

「フランスのシャモニーはアルプスの山々もあって、綺麗な街で印象に残っています」

チャレンジャーから追われる立場へ

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<アジア競技大会2018 写真:長田洋平/アフロ>
昨年9月に行われた世界選手権は残念ながら怪我で欠場となりました。どのような気持ちで大会をご覧になっていましたか?

「世界選手権は大きな大会で、怪我した当初はどうしても出る気でいたくらい、本当に出場したかったんです。なので、すごく悔しかったですね。大会中は深夜でもちゃんと起きて、ライブで観ていました」

怪我は直前の8月、アジア競技大会の最中に負ってしまいました。

「コンバインド最後の種目のリードで、膝の靭帯を痛めてしまいました。『バキバキ』って音がして、そのまま手を放して降りてきたんですけど、立てなくなってしまって力が入らない状態でした。今はもう完治したので、まったく気にならないです」

W杯で表彰台に上がるためには、どのあたりの強化が必要だと感じていますか?

「もう少し距離出しができるようになったり、高い強度に耐えられるようなフィジカルに鍛えないといけません。あとは気持ちの部分も大きいと感じています。絶対に表彰台に乗るとか、プレッシャーがかかった状況でも登り切るとか。そういったところが大事だと思いますね」

以前は周囲からのプレッシャーはあまり気にならないと言っていました。

「今まではチャレンジャーで、自分が突き進んでいくというか、『追い越せ』みたいな感じだったので、プレッシャーはあまり気にならなかったんです。でも、今回のBJCでも最後の4課題目を一撃すれば優勝できる場面で決め切れませんでした。そういったシチュエーションの経験があまりないので、気持ちをうまく作れなかった部分はありました。もっと経験を積んで慣れていきたいですね」

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昨年からは本格的にコンバインドに取り組むようになりました。

「今までは、ホルダリングの大会の前はボルダリング、リードの大会の前はリード、といったトレーニングの仕方でしたが、やはりそれではダメで、3種目しっかりトレーニングしていく必要性を感じていますね。それと競技中は各種目が終わった後の切り替えも難しくて、特にスピードが終わった後は体力的にも精神的にも疲れるので、次のボルダーへの集中力が切れてしまうと感じることがよくあります」

今年からコンバインドは決勝進出者が6名から8名に変わります。

「ラッキーだと思いますね。いや、ラッキーなのかな?(笑)」

ボルダリングは4課題から3課題へと少なくなるそうです。

「ボルダリングへの集中力が欠けてしまいがちな現状で、その数が減ることによって集中しやすくなるかもしれません。次のリードにも体力を残せると思いますし」

コンバインドへの取り組みの成果か、体もひと回り大きくなったように感じられます。

「周りの人からもよく言われます。『あれ?でかくなった?』って(笑)。身長はあまり伸びていないんですが、筋肉が付いて、それで大きく見られるようになりました」

今年は8月に日本では初めての世界選手権が開催されます。自国で行われることについてはどう感じていますか?

「去年のW杯八王子大会で決勝に残れたこともあって、自国開催の国際大会には良いイメージがありますね。登りやすいと感じています」

プレッシャーにはなりませんか?

「メディアの方も多くなるでしょうし、それ以上に応援してくれる人や会場に足を運んでくれる人がたくさんいらっしゃると思います。BJCの時もそうでしたが、声援を感じられるという点ではとても嬉しいですね」

高校生活と新しい家族

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メディアへの対応も、以前よりだいぶ慣れてきたのでは?

「そうですね。受け答えの言葉もスムーズに出てくるようになったと感じています」

昨年は地元・盛岡でコンバインドジャパンカップが開催されました。地元の新聞でも大きく取り上げられ、声をかけられる機会も増えたのでは?

「お母さんやお父さんがサインを頼まれて、家に色紙をたくさん持って帰ってくることが増えました(笑)」

TEAM auに加入して1年が経ちました。

「こういったTEAM auでの撮影のように、大会以外でも話をする機会が増えましたし、啓代ちゃんとは去年のシーズン終わりにお疲れ様会としてごはんを食べに行ったりもしました」

新たに家族の一員も増えたそうですね。

「黒柴を飼い始めました。親に頼んで、9月頃からですね。帰ってきた時の癒しが欲しいって(笑)。名前は好きな選手のジュリアン・ワーム(ドイツ)から取って、ワム君です。とっても可愛いんですよ」

高校生にもなりました。大会が続くと学業との両立も難しそうです。

「最初の頃は勉強もまだ追いついていけてたんですけど、大会で休むことも多くなってきました。特に補習もないので、自分で勉強するしかないんです」

勉強も競技も、頑張ってください。最後に、ファンのみなさんへのメッセージをお願いします。

「今シーズンは8月の世界選手権、コンバインドで結果を出すことを目標にしています。SNSのコメントで『応援してます』とか言っていただけると、とても嬉しいです。いつもありがとうございます」

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※このインタビューは2019年2月16日に収録されました。

インタビュー・文:CLIMBERS編集部
写真:永峰拓也
撮影協力:B-PUMP 荻窪店

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