初心者が『ボルダリング検定』5級合格を目指す、密着ドキュメント【第5回】

まったくのボルダリング初心者が、日本クライミングジム連盟主催の技能検定『ボルダリング検定』で5級合格を目指す――。今年2月に名古屋で開催される検定会に挑戦するのは、キックボクシングが趣味でスポーツ万能の豊田恭兵さん(27歳)と、映画とゲームが好きで普段スポーツは一切しないという葉月蓮さん(23歳)のモデル2人だ。彼らの歩みを追う連載の第5回は、TEAM auの野口啓代、楢﨑智亜、楢﨑明智をはじめ、多くの日本代表選手を指導してきた伊東秀和コーチが登場。検定前の追い込みレッスン、最終調整方法をお届けします。

足を安定させ、落ち着いた登りが重要

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2月16日(土)の本番に向けて、最後のレッスンとなったこの日。訪れたジムは2017年10月にオープンした「PUMP CLIMBER'S ACADEMY」(東京都・新宿区)。世界初のクライミング専用トレーニングジムとして、充実した施設と豊富なスクールをラインナップする本格的なジムです。

本番まで残すところ1ヶ月ということで、数々のトップクライマーを育て上げてきた伊東コーチの熱の入ったレッスンがスタートです。まずはウォーミングアップを兼ねて距離の長い課題を使って2人の登りをチェック。伊東コーチがお手本を示し、それを真似て2人が登っていきます。簡単な課題ということもあり、無難に完登した2人でしたが、その様子を見た伊東コーチから「2人とも登れてはいます。ただ、落ちないようにという意識が強いため、しがみついてしまっていますね。まずは落ちてもいいので、慌てずに落ち着いて登ることを意識しましょう」と早速アドバイス。難しい課題のときに落ち着いて登るために、簡単な課題でも落ち着きを身につけることが大事だと言います。

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<フットホールド専用の練習壁でトレーニングする2人>

さらに伊東コーチが気になった点は、2人の足の置き方です。フットホールド専用の練習壁に移動して、足の置き方の基礎を教えてもらうことにしました。安定して足を置けていない2人に対して「まずはフットホールドの形をしっかりと見ること。形を理解せずに足を置いてしまうと結構滑るんですよね。ゆっくりでも構わないのでフットホールドを見て、形状を理解しながら足を置きましょう。フットホールドはしっかりと乗れていることが重要です。足場が安定しないと手も進んでいきません」と、5級になると手のホールドだけでなく、足のホールドも悪くなることへの対応も必要になります。

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<親指と人差し指でホールドを掴むイメージ>
<母指球でホールドに乗るイメージ>

「ポイントは踵(かかと)を壁から外に出して、足の親指と人差し指でホールドを掴む。足でホールドを掴んで、手を出してホールドを掴むようなイメージになります。日常生活では指だけで立つことがないので、どうしても母指球で乗るイメージになってしまいます。ただ、それだけでは対応できなくなってくるので、足の指でフットホールドに立つ感覚を覚えましょう」。2人は親指と人差し指を意識しながら、しっかりとフットホールドに立つ練習を繰り返して、続いて通常の課題に移動します。

足が安定したら、タメの動作を習得

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<下半身を落としてタメを作る動き>
<下半身の力で体の中心を押し上げる動き>

先程教えてもらった落ち着いてフットホールドに立つことを意識しながら8級、7級の課題を登っていきます。伊東コーチは「2人に必要な動きは、フットホールドにしっかりと立って、次のホールドを取りにいく準備ができたらタメを作ること。取りたいホールドに対して反対側へ一度離れるようにタメを作ってから取りにいきます。足の力で重たい体の中心を動かしてからホールドを取りにいくイメージになります」と、腕の力ではなく、足をうまく使いながら体全体でホールドを取りにいく意識が大事だとアドバイス。それをふまえて少し傾斜した7級の壁で葉月さんが挑戦。1手ずつタメを意識しながら完登すると「こっちのほうが登りやすかったです」と体全体を使って登る感覚を掴むと、豊田さんもタメを丁寧に意識しながら完登することができました。

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テクニックのトレーニングはここまで。ここからはより実戦を意識して伊東コーチが選んだ6級の垂壁(90度の垂直壁)、薄被り(100~110度の壁)、少し傾斜(110度~130度の壁)した3課題に挑戦。まずはオブザベーションでどういった課題なのかを確認してイメージを膨らませます。最初の垂壁では足場にやや苦戦しながらも2人とも完登。続く薄被りの課題では豊田さんは完登できましたが、葉月さんは途中の保持に苦しんで完登できず。それでも最後の少し傾斜した課題では、2人ともタメをしっかりと意識できて見事に完登しました。その後、豊田さんは5級課題にトライし、葉月さんは登れなかった課題に再トライしながら別の6級課題に挑戦。各課題で細かいアドバイスをもらいました。

レッスンの締めはここまで完登できた課題の中で難しかった課題を3つ選び、各2トライを登ってこの日のトレーニングは終了しました。

合格への近道は"とにかく基本"

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レッスン終了後に最後の1ヶ月、追い込みのための具体的なトレーニングプランを考えてもらいました。「ストレッチなどのウォーミングアップを終えたら、まず8〜7級の簡単な課題で40分程度、反復してテクニックの練習をします。そのあとに6級10課題を1トライ限定で登りましょう。ペースは15分。5級検定に挑戦するので、6級を1トライで集中して登るトレーニングです。それが終わったら本番を想定した5級の課題を5つ選び、各課題5トライ制限で完登を目指します。壁は傾斜の違う5つを選びましょう。もし5課題を完登できたら4級の垂壁や薄被りの課題を選び、トライする時間を作ります。また、ランジ(ジャンプしてホールドを取る大技)など高度なムーブが求められるものより、シンプルな内容を選ぶようにします。練習時間が残り30分を切ったら少し休憩を入れて、最後はその日に完登した難しい課題を5つ選んで各2トライ制限でトレーニングをします。

『検定1ヶ月前の実践的トレーニング法(2時間程度)』
トレーニング内容時間配分
ウォーミングアップ&8〜7級課題を登る 40分程度
6級10課題を1トライで登る 15分程度
5級5課題を各課題5トライ以内で登る 40分程度
5課題を完登できたら4級にも挑戦
5課題を完登できなかったら他の5級を登る
その日完登した中で難しい5課題を各2トライ制限、計10トライで再登を目指す 15分程度

「5級検定を目指す人は離れ業を練習するのではなく、とにかくベーシックな登りを練習することが大事です。課題の手順を理解できているか、ハンドホールド、フットホールドの形を認識してちゃんとフィットさせられているか、全身を使ってリラックスして登れているか。そういう基本をしっかりと身につけることをトレーニングでは意識してください。残り時間は短いですが、2人には今日やった内容を突き詰めて本番までトレーニングしてほしいですね」。

レッスンを終えて

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伊東コーチに実践的なトレーニングをみっちり受けて、葉月さんは「今日もたくさん学ぶことがありました。その中でも足の置き方が一番勉強になって、つま先でホールドを感じて登るということは発見でした。伊東コーチには週2くらいで登ればと言われましたが、残り1ヶ月なのでもっと登り込みます。豊田さんに負けているのが一番悔しいので、"打倒・豊田"で頑張ります!(笑)」と意気込むと、豊田さんは「今日のレッスンでかなり登りやすくなりました。足の置き方や体の使い方など自分では気が付かないことをたくさん指摘してもらえました。今日まで教えてもらえたことをしっかりと意識して、ジムも変えながら、丁寧にしっかりと登り込んでいきます!」と決意を語りました。

次回はいよいよ運命の『ボルダリング検定』本番の模様をお届けします。2人は5級合格できるのか?お楽しみに!

ボルダリング検定の公式HPはこちら
http://www.jcga.co/bouldering.html

PUMP CLIMBER'S ACADEMYの公式HPはこちら
http://pump-climbing.com/pca/

取材・文:篠 幸彦
写真:森口 鉄郎
撮影協力:PUMP CLIMBER’S ACADEMY

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