伊東秀和コーチが教える初めてのボルダリングコンペ対策 【前編】

ボルダリングを始めて数カ月、日々の上達を実感しているクライマーの中には、ジムで登るだけでは物足りなくなってきた方もいることでしょう。その次なる目標、腕試しの機会として「コンペ(大会)」があります。そもそもコンペとはどんなものなのか? 【前編】ではコンペに挑む心構えやメリットを、TEAM auの野口啓代、野中生萌、楢﨑智亜、楢﨑明智をはじめ、多くの日本代表選手を指導してきた伊東秀和コーチです。

そもそもボルダリングコンペとは何なのか?

ボルダリングのコンペとは、JMSCA(日本山岳・スポーツクライミング協会)や、その傘下の各都道府県連盟が主催する公式戦から、各クライミングジムが主催する草コンペまで、幅広くボルダリングの大会のことを言います。カテゴリーは男女、年齢、レベルごとに分けられ、レベルは大きくビギナー、ミドル、マスターの3つがあります。大会によって変わりますが、ビギナーは5級が登れる程度、ミドルは4〜3級、マスターは2級以上が目安になります。初めて挑戦する方はビギナーからのスタートになるでしょう。

コンペの大会形式は「セッション方式」で予選を行うのが一般的です。セッション方式とは、カテゴリー別に8〜10課題が用意され、制限時間内でトライの回数制限なく好きな順番で登り、完登数とゾーン獲得数(コース途中に設置された順位決定時に加点となるホールド)で順位を競います。予選上位者を対象に、3〜4課題を使った決勝を行います。決勝は、各課題に対して1選手ずつ出てきて制限時間内にトライする「W杯決勝方式」が一般的です。大会によってはセッション方式のみで順位を決める場合もあり、形式は様々です。参加費はジム主催の安い大会で3,000〜5,000円。公式大会になると10,000円程度です。毎月のように様々なコンペが開催されているので、自分のレベルにあったコンペを探してみましょう。

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写真:CLIMBERS

コンペは 「うまくいかなくて当然」と思いましょう

コンペに初めて参加する際の心構えとして覚えておいてもらいたいのが、「コンペは思うようにいかないもの」だということ。恥ずかしいから強くなってから出よう、もっとうまくなってから出よう、と大抵の人は思いがちです。しかし、どんなに強くなってからコンペに出たとしても、最初のコンペはうまくいきません。それがコンペです。緊張状態で限られた時間の中、普段の登りをするということがまず難しいです。けれどその独特の緊張感の中だからこそ、自分の課題を発見できるはずです。

ただ、そうは言ってもエントリーしたカテゴリーにまったく対応できない状態で出場しても登れないのは当然。せっかく大事な時間を割いて大会に出ても、ゼロ完登で終わったらフラストレーションが溜まるものです。それはうまくいく、いかない以前の問題で、誰だって「コンペなんか出なければよかった」と思ってしまいます。エントリーするカテゴリーの目安となる級数の課題にはある程度対応できる力は身につけておきましょう。

また、自分に合ったカテゴリーを選ぶことに加えて、コンペでは普段とは違って無理をしてしまう人が多いので、着地も含めて体のコントロールができるようになることも大事です。登りも勢いだけで登るのではなく、いろんなタイプの課題を登れるようになって、体もある程度でき上がってからがいいでしょう。そうでなければ怪我のリスクが高くなってしまうので、半年から1年くらいジムで登ってから挑戦してみるのがいいと思います。

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コンペに出ることのメリット

まず、コンペ当日に普段にはない緊張感の中で、今の自分の力を全力で出すという経験をするだけで大きく成長できます。さらに、コンペに出ると決めた時点で、それまでの時間が充実するはずです。例えば2週間後にあるコンペにエントリーしたとすると、本番までの2週間はクライミングへの意識が変わります。自分の苦手な課題を練習してみたり、いつもはやらないちょっと難しい課題を触ってみたり。私生活でも飲み会に行く回数を自制したり、体が重くならないように食事の内容に気をつけてみたり。たとえコンペでうまく成績が出なくても、エントリーした時点でクライミングの内容や日常生活で意識が高まり、普段よりも様々な面で質が上がっていきます。

加えて、同じようなレベルの人が同じ課題を登るというシチュエーションもなかなかありません。そこで得るものが必ずあるはずです。いつもは人の登りをそこまで観察することはなくても、コンペに入れば集中して観察するもの。そこから自分に何が足りないのか、他人の登りを深く観察することで自分のクライミングの上達に繋がります。

また、コンペに出るようになると「コンペ仲間」ができます。クライミング仲間としてもそうですが、「次のコンペまでにはあの人よりも登れるようになろう」といったライバル関係も生まれていきます。コンペで自分の順位の上下にいる人たちの動向は意識してしまうもので、あの人よりも登れるようになろうという気持ちは良いモチベーションになります。ジムには自分と同じレベルの人がたくさん集まることはないので、そういったコミュニティの広がりもコンペの魅力です。

そしてコンペに出ることで、TEAM auの選手のような世界のトップクライマーの登りをテレビなどで観た時に、その凄さがより一層わかるようになるでしょう。きっと試合観戦もこれまでよりエキサイティングになるはずです。それもコンペに出ることで意識が変わることの一つです。こうした様々な意識や環境の変化が、すべてレベルアップに繋がっていくことがコンペに出ることの大きなメリットだと思います。

今回は、初めてのコンペに向けて覚えておいてほしいことを紹介しました。【後編】は実践編として、コンペで使えるテクニック、そのトレーニング方法などを解説します。

  • 伊東秀和
  • 伊東秀和(いとう・ひでかず)
    1976年、千葉県生まれ。2002年、03年のジャパンツアー年間王者。日本代表として11年まで世界選手権5大会に連続出場(リード種目)。現在は『伊東秀和クライミングスクール』を主宰し、多くの日本代表選手からユース世代、一般の方まで幅広く指導している。『スカイA』スポーツクライミング番組の解説でもおなじみ。
    公式インスタグラム https://www.instagram.com/hide9a2016/

取材・文/篠幸彦
写真/窪田亮
撮影協力/PUMP2 KAWASAKI

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