野口啓代がボルダリングで世界2位!/IFSCクライミング世界選手権

2年に1度開催されるスポーツクライミング界で最も権威ある大会、IFSCクライミング世界選手権が9月16日、10日間の熱戦に幕を下ろした。リード、ボルダリング、スピード、そして世界選手権では初開催となるコンバインド(3種目複合)の4種目に、約60カ国から800人を超えるトップクライマーが出場し、世界王者の栄誉を懸けて戦いを繰り広げた。TEAM auからは前回大会ボルダリング王者の楢﨑智亜を筆頭に、藤井快、楢﨑明智、野口啓代、野中生萌が全4種目に参戦。野口が女子ボルダリングで2位に輝く活躍を見せた。

リード(女子)

今大会最初の王座を懸け、9月9日に行われた女子リード決勝。TEAM auの野口は8位、野中は準決勝敗退で16位という結果に終わった。約4000人の観客が詰めかける中、決勝4番手で登場した野口は、2番手の日本代表・小武芽生が記録した33+まで到達できず31+でフォール。フットホールドで足を滑らせてしまい、悔やまれるトライとなった。優勝はジェシカ・ピルツ(オーストリア)で世界選手権初制覇。同じくTOPまで登りつめたヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)を完登に要したタイムで11秒上回り、地元の大観衆の前で今季リードW杯年間首位の女王に黒星を付けた。

リード(男子)

女子決勝の翌10日に決勝が開催された男子リードでは、楢崎(智)が準決勝敗退で13位、藤井は予選敗退で27位に。その中で決勝に進出したのが楢﨑(明)だ。日本出発の直前まで兄・智亜と持久力を高めるトレーニングを行い、この大会第1種目のリードに照準を合わせてきたという楢崎(明)。高度32のスローパーに手を伸ばすも止めきれず頭を抱えたが、「緊張でガチガチだった」という初出場の前回パリ大会(29位)から2年、日本人最高の4位と堂々の成績を収めた。優勝は前回大会2位のヤコブ・シューベルト(オーストリア)。女子のピルツ(オーストリア)に続き、地元選手がリード世界一の座に就いている。

スピード(男女)

日本勢の決勝トーナメント進出はならなかったものの、楢﨑(智)と野中がそれぞれ男女の日本記録を更新したスピード。楢﨑(智)は13日の予選で、先月自ら計測した6秒83の日本記録を縮める6秒69を叩き出した。決勝トーナメント進出ラインとなった6秒38には約0秒3届かなかったが、日本男子最高の21位で競技を終えた。

野中も自身の持つ日本記録9秒28を上回る9秒06でフィニッシュし、日本勢最高の25位に。この2人の他にも、野口や藤井が自己ベストを更新した。世界のトップにはまだ及ばないが、男女とも予選突破の目安となるタイムまで1秒を切っており、その差は着実に縮まっている。

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ボルダリング(女子)

今シーズンのW杯で年間王者に輝いた野中、同2位の野口に期待が懸かったボルダリング。14日の決勝では、ゾーン獲得数で優勝には及ばなかったものの、野口が2位で表彰台に上がった。野中はリードの予選で痛めた肩の状態が思わしくない中で決勝に進出、5位でフィニッシュしている。

決勝は第1課題から難関となった。スタートから連続した動きが続くコーディネーション系の難しいムーブを求められ、先頭の野中はゾーンも掴めずに終える。続く第2課題も完登者はゼロ。スラブ(緩傾斜)壁の第3課題で、野中は3トライで初のゾーンを獲得したが、TOP手前のクレーターを止められず完登はならなかった。

野口はこの第3課題で野中と同じく決勝初のゾーンを獲得すると、2トライ目で完登。上位争いに踏みとどまったものの、暫定首位のガンブレットも完登したため、ゾーン獲得数の差によって優勝の可能性は潰えた。完登できれば銀メダルという最終課題。野口は持ち前のしなやかさと保持力の強さを駆使して2トライで攻略し、2位を手中に収めた。優勝はガンブレットで、前回大会のリード優勝に続いてボルダリングでも世界の頂点に立っている。

ボルダリング(男子)

TEAM auからは2連覇を目指す楢﨑(智)、ユース世代の王者・楢﨑(明)、藤井が出場。準決勝を全課題完登した藤井が首位で決勝進出を果たした一方、楢﨑(智)は3完登の7位で準決勝敗退、楢﨑(明)は37位で予選敗退となった。

15日に行われた決勝。全選手が第1課題を完登した後の第2課題は、スラブ(緩傾斜)壁の足場の悪いフットホールドを横移動しゾーンを掴めるかがポイントとなった。4人が完登する展開で、藤井はゾーンを獲得できず上位から引き離される。第3課題を2トライで完登した藤井は2完登2ゾーンとするが、5位という結果に終わった。この大舞台でただ一人4課題を全完登し、初優勝で世界チャンピオンという偉業を成し遂げたのは、日本代表の原田海。国内外を含めシニアの公式大会では表彰台に乗ったことのなかった19歳が新王者に君臨した。

コンバインド(女子)

大会最終日の16日、「初代」コンバインド世界王者の称号をめぐる戦いには、リード、ボルダリング、スピードの単種目の成績上位6名がエントリー。女子では日本の2トップ、野口と野中が参戦したが、それぞれ4位と5位に終わった。

第1種目のスピードでは、スピード単種目で記録した9秒06が出場6選手で最速の野中が有利と見られた。しかし野中はピルツとの初戦に勝利するも、敗者の中で最もタイムが良かったピルツとの再戦となった次ラウンドでは、スタートから2手目を取りに行く際のフットホールドで足を滑らせ敗れてしまう。その後3位決定戦に回ったが、今度はフライングで4位に。野口も初戦のフライングによって最下位の6位スタートとなった。

続いて行われたボルダリングでは、両者2完登2ゾーンという記録で、野口がこの種目3位、野中は4位。暫定6位の野口(18ポイント)と暫定5位の野中(16ポイント)にとって、銀メダルの可能性を残して迎えたラストのリードだったが、大会最終日、そしてコンバインド最終種目とあって蓄積された疲労が2人の体力を奪っていき、ともに中盤の31+(野口)、26+(野中)で力尽きた。初代複合の世界女王に輝いたのは、ボルダリングとリードで1位を獲得したガンブレットだった。

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コンバインド(男子)

女子に続いて開催された男子決勝は、こちらも楢﨑(智)が5位、藤井が6位とメダル獲得は叶わなかった。最初のスピードで、ファイナリスト最速の楢崎(智)がつまずく。初戦でわずかに足が先に動いてフライング。敗者復活にも回れず6位スタートとなってしまう。藤井は日本人対決の初戦で原田に勝利したが、次の準決勝ではゴール目前で足をスリップさせてしまい、この種目を3位で終えた。

第2種目のボルダリングで巻き返しを図りたい楢崎(智)は、暫定3位で迎えた最終課題を一撃して1位通過に望みを繋いだが、その後の5人全員も一撃して順位は動かず。藤井は6位に終わり、この時点で2人の金メダルへの道は絶たれてしまう。最終種目のリードでは、藤井が30+で4位、楢崎(智)が34で5位。初代複合王者には地元のシューベルトが輝き、会場は大声援に包まれた。

<リード 女子決勝>
1位:ジェシカ・ピルツ(21/オーストリア)/TOP
2位:ヤンヤ・ガンブレット(19/スロベニア)/TOP
3位:キム・ジャイン(29/韓国)/34+
4位:小武 芽生(21)/33+
5位:白石 阿島(17/アメリカ)/32
6位:アナーク・バーホーベン(22/ベルギー)/31+ ※準決勝1位
7位:ミア・クランプル(18/スロベニア)/31+ ※準決勝6位
8位:野口 啓代(29)/31+ ※準決勝7位
8位:ハンナ・シューベルト(20/オーストリア)/31+ ※準決勝7位
10位:ローラ・ロゴラ(17/イタリア)/24+
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16位:野中 生萌(22) ※準決勝進出

<リード 男子決勝>
1位:ヤコブ・シューベルト(27/オーストリア)/36+ ※準決勝2位
2位:アダム・オンドラ(25/チェコ)/36+ ※準決勝5位
3位:アレクサンダー・メゴス(25/ドイツ)/33.5
4位:楢崎 明智(19)/31+
5位:ドメン・スコフィッチ(24/スロベニア)/29+ ※準決勝1位
6位:ヤコブ・コーンクニー(19/チェコ)/29+ ※準決勝6位
6位:高田 知尭(22)/29+ ※準決勝6位
8位:サッシャ・レーマン(20/スイス)/23
9位:マルチェッロ・ボンバルディ(25/イタリア)/20+
10位:原田 海(19)/16+
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13位:楢崎 智亜(22) ※準決勝進出
27位:藤井 快(25)

<スピード 女子決勝>
1位:アレクサンドラ・ルジンスカ(24/ポーランド)/7秒56
2位:アンナ・ブロジェク(23/ポーランド)/7秒65
3位:マリア・クラサヴィナ(28/ロシア)/不戦勝
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28位:野中 生萌(21)/9秒06 ※日本記録
47位:野口 啓代(29)/10秒54 ※自己新

<スピード 男子決勝>
1位:レザー・アリプアシェナ(24/イラン)/5秒63
2位:バッサ・マエム(33/フランス)/fall
3位:スタニスラフ・ココリン(28/ロシア)/6秒02
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21位:楢崎 智亜(22)/6秒69 ※日本記録
36位:藤井 快(25)/7秒28 ※自己新
42位:楢﨑 明智(19)/7秒62

※1・2位選手の成績は決勝タイム、3位選手の成績は3位決定戦タイム

<ボルダリング 女子決勝>
1位:ヤンヤ・ガンブレット(19/スロベニア)/2t3z 7 7
2位:野口 啓代(29)/2t2z 4 3
3位:スターシャ・ゲージョ(20/セルビア)/1t2z 1 6
4位:ジェシカ・ピルツ(21/オーストリア)/0t2z 0 4 ※準決勝4位
5位:野中 生萌(21)/0t2z 0 4 ※準決勝6位
6位:ペトラ・クリングラー(26/スイス)/0t0z 0 0

<ボルダリング 男子決勝>
1位:原田 海(19)/4t4z 7 6
2位:チョン・ジョンウォン(22/韓国)/3t4z 9 10
3位:グレゴール・ヴェゾニック(23/スロベニア)/3t4z 9 17
4位:渡部 桂太(25)/2t4z 6 10
5位:藤井 快(25)/2t2z 5 4
6位:ネーサン・フィリップス(24/イギリス)/1t2z 5 6
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7位:楢崎 智亜(22) ※準決勝進出
37位:楢崎 明智(19)

<コンバインド 女子決勝>
1位:ヤンヤ・ガンブレット(19/スロベニア)
5ポイント(S 5位/B 1位/L 1位)
2位:サ・ソル(24/韓国)
12ポイント(S 1位/B 2位/L 6位)
3位:ジェシカ・ピルツ(21/オーストリア)
24ポイント(S 2位/B 6位/L 2位)
4位:野口 啓代(29)
54ポイント(S 6位/B 3位/L 3位)
5位:野中 生萌(21)
64ポイント(S 4位/B 4位/L 4位)
6位:ペトラ・クリングラー(26/スイス)
75ポイント(S 3位/B 5位/L 5位)

※下段左から各種目順位を掛け合わせた複合ポイント、各種目順位(S=スピード、B=ボルダリング、L=リード)

<コンバインド 男子決勝>
1位:ヤコブ・シューベルト(27/オーストリア)
4ポイント(S 2位/B 1位/L 2位)
2位:アダム・オンドラ(25/チェコ)
10ポイント(S 5位/B 2位/L 1位)
3位:ヤン・ホイヤー(26/ドイツ)
24ポイント(S 1位/B 4位/L 6位)
4位:原田 海(19)
60ポイント(S 4位/B 5位/L 3位)
5位:楢崎 智亜(22)
72ポイント(S 6位/B 3位/L 4位)
6位:藤井 快(25)
90ポイント(S 3位/B 6位/L 5位)

※左から氏名、年齢、所属国、決勝成績

写真/窪田亮
文/CLIMBERS編集部

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