リードW杯開幕直前!今さら聞けないリードクライミングの基礎知識

7月6・7日のヴィラール(スイス)大会を皮切りに、今年もリードW杯が開幕します。TEAM au所属選手の大活躍もあり、ボルダリングのことは"だいたいわかってきた"という方も、リードとなるとまだ馴染みが薄いかもしれません。そこで、これから始まるW杯をより一層楽しむために、リードクライミングの今さら聞けない基礎知識から観戦を楽しむためのポイントをご紹介します。

そもそも、リードってどういう種目なの?

リードはスポーツクライミングの3種目のうちの1つです。スピードでは登る速さを、ボルダリングでは4~8手程度の短い課題をいくつ登れるかを競うのに対して、リードは12m以上の壁で最大60手にもなる長いルートをどこまで登れるかを競います。特に日本では今でこそボルダリングが流行っていますが、長く高い壁を登るリードは歴史も深くまさにクライミングそのものであり、花形種目と言えるでしょう。

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どんな能力が求められる?ボルダリングとの違い

リードの特徴は「ルートが長い」「トライは1度のみ」の2点です。ボルダリングは1手1手強度のある動きをこなす力が必要ですが、リードはボルダリングの課題の何倍もの長さを登らなければならないため持久力が第一に求められます。またルートのどこで体力を回復させるレストを挟むのか、どこは一気に突破していくべきかといった登りの全体プランや戦術を組み立てる能力、そしてそのプランが崩れた際にとっさの現場の判断で対処する能力も高く求められます。さらに時間内なら同じ課題に何度もトライできるボルダリングに対して、リードは1度しかトライできず落ちてしまったらそこで競技終了となります。ですので、時にはリスクを冒すような動きも必要ですが、基本的にはミスをしない着実な登りが求められます。

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リードW杯とは?過去には日本人チャンピオンも

リードW杯とはIFSC(国際スポーツクライミング連盟)が統括する大会であり、毎シーズン世界各地で複数開催(2018年シーズンは全7戦)され、各大会の順位を元にその年の年間優勝者を決定します。その歴史は1989年から続いていて、91年の東京大会で平山ユージさんが日本人初優勝、98年と00年には年間優勝という快挙を達成しました。その後長らく日本人はリードW杯で表彰台の頂上に立てませんでしたが、2012年に安間佐千さんがフランスのシャモニーで優勝するとそのまま年間優勝を成し遂げ、翌13年も連続で年間優勝。現役の日本代表では是永敬一郎選手が昨年、中国の廈門大会で日本人男子3人目となる優勝を果たしました。日本人女子はTEAM auの野口啓代選手や小林由佳さんをはじめとして数人の選手が決勝や表彰台に上がってはいますが、優勝できたのは小田桃花選手(12年)ただ一人です。

リードW杯、ここに注目すると楽しめる!

リードW杯ではまず、昨今ますますビジュアルが豪華になっているルートを目で見て楽しんでほしいです。巨大なハリボテ(壁から出っ張っている大振りなホールド)を使ったコースも多く、動きもランジ(壁内でジャンプしホールドを取りにいくムーブ)などが要求されることがあり、その一部分だけ切り取ったらボルダリングの課題と遜色ないルートもあります。そういった最近の傾向を踏まえた上で、「リードのスペシャリスト」と「ボルダリングのトップ選手」がそれぞれどのように攻略するかという視点で観戦するとより一層楽しめるかもしれません。

男子であれば、昨年のリードW杯で年間優勝を果たしたフランスのロマン・デグランジュ選手、同2位のイタリアのステファン・ギゾルフィ選手といったリードのスペシャリストの底知れない持久力に対して、TEAM auの楢﨑智亜選手や韓国のチョン・ジョンウォン選手などボルダリングで年間優勝を経験するほどの力を持つ選手がどう対抗するのか。彼らは昨年少ない参戦ながらも、今風のボルダリングチックなルートを得意とするためリードW杯でも表彰台や決勝の舞台に上がりました。女子は、リードもボルダリングも世界トップの実力を持つ昨年リードW杯年間優勝のスロベニアのヤンヤ・ガンブレット選手、同様に両種目とも得意とする野口選手などに対して、リードのスペシャリストで昨年2位のベテラン、韓国のキム・ジャイン選手や同3位のベルギーのアナ・バーホーベン選手が意地を見せるのかといった構図になっています。

TEAM au所属選手と日本勢の活躍に期待

今年のリードW杯での日本人選手の行方を予想すると、まず絶対的エースであり昨年は年間3位に躍進した是永選手が怪我のため欠場というのが残念な点。しかしその是永選手の後輩で、昨年のシャモニー大会で3位に入ったリードのスペシャリストである波田悠貴選手が日本チームを牽引していく存在になるでしょう。次々に良いポジションに身体を入れていく登りの上手さと絶対的なスタミナが武器であり、7月の4連戦にすべて出場予定と期待が持てます。また先述した楢﨑選手以外にも、TEAM auの藤井快選手に加えて、原田海選手、緒方良行選手などボルダリングに強みがある選手も上位に食い込む可能性は大いにあるでしょう。

女子は何と言っても野口選手が日本勢では上位有力候補です。野口選手というとボルダリングの絶対女王というイメージが強いかもしれませんが、リードW杯では優勝こそないものの安定して一桁順位を取り表彰台も数多く経験しているオールラウンダー。他には、今年からW杯に初参戦して先日の八王子のボルダリングW杯で決勝進出、リードの日本選手権でも3位に入っているTEAM au最年少の伊藤ふたば選手からも目が離せません。若い力がどこまで通用するかに注目しましょう。

2018年7月5日

文:植田幹也
写真:JMASCA/アフロ

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