伊東秀和のボルダリング上達レッスン "5級の壁"を突破しよう 【実践編】

ボルダリングを始めて、楽しくがむしゃらにグレードを伸ばしてきた方も、このあたりで"壁"にぶつかるのではないでしょうか。5級課題となれば、あらゆる傾斜やホールドへの対応が必要となり、力まかせでは通用しなくなります。前回の【基礎編】では"5級の壁"攻略のための基礎を学んでいきました。今回は【実践編】ということで、実際に壁を登る時に覚えておきたいテクニックとトレーニングメニューを紹介したいと思います。指南役は前回に続いて、TEAM auの野口啓代、野中生萌、楢﨑智亜、楢﨑明智をはじめ、多くの日本代表選手を指導してきた伊東秀和コーチです。

テーマは「足を切らさずに全身を連動して、繋いでいくクライミング」です。

5級になってくると片足で登ることが増え、両足をしっかりとつけた状態で手が出せなくなってきます。いわゆる2点支持のシチュエーションです。そうした時、つい上半身で飛びつくような派手なムーブでホールドを取りにいってしまいがちですが、課題のレベルが上がってくるとそれだけでは攻略できなくなってきます。そこで中級者・上級者になるための一歩として覚えてもらいたいのが「足を切らさずに登る」ということです。

例えば、高いところに足を上げる時も下の足をしっかりと残して上げていくこと。そこで足を切らして上半身だけで登ろうとし、バラバラに動かしてしまうと体の一箇所に負担がかかってしまいます。大切なのはつま先から全身のパーツを総動員し、全体を連動して動かすことです。そうすることで指先への負担、必要なパワーを軽減することができ、より楽に登ることができます。今回はそうした足をうまく使って全身を連動させて登るテクニックを学んでいきましょう!

5級攻略のテクニック①:スメアリング
片足の足場がない時は壁で支点を作る

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今まで足場には足を乗せられるホールドが2つあったのが、5級になってくると足を乗せられるのが1つしかない場合も出てきます。ビギナーは足場が1つなくなるだけで片足がぶらぶらして不安定になったり、踏ん張れなくなって次のホールドを取りにいけなくなってしまいます。そこで覚えたいのが片足の足場がない場合、ホールドを取りにいく時に壁をつま先で押すことで支点を作り、体を安定させるテクニックです。スメアリングの基本的な位置は取りにいくホールドの対角となる場所ですが、正しい場所はケースバイケース。どこが一番安定するかはいろんな課題で試して感覚で覚えるようにしましょう。課題のレベルが上がってくればいつも良い場所に足場があるわけじゃありません。スメアリングを覚えることで、難しい足場も攻略することができるでしょう。

5級攻略のテクニック②:体を旋回させる
ひねりの力を利用して登ろう

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5級になると傾斜の強い壁が増えてきます。そこで腕の力だけで登ろうとして、パワー不足で体を引き上げることができずに苦戦するのはビギナーにありがちです。被った壁(傾斜の強い壁)を登る時は、体を旋回させて登る動きが基本になります。動きのスタートは壁に正対した状態からまず膝を入れ、膝の動きに合わせて骨盤を回します。骨盤を回すことで上半身が旋回して勢いが生まれ、そのパワーを利用してホールドを引いていきます。ボクシングで体を旋回させて強烈なパンチを打ち込んだり、野球やゴルフで腰を入れて体全体をひねるようにスイングするのと同じイメージで、一連の動きをスムーズに連動させる意識が大切です。せっかく膝を入れていても、そのあとの上半身の旋回が連動していなければ、効果が半減してしまいます。この体の旋回を利用するのは、力をセーブして登るためのテクニックなので身につけましょう。

5級攻略のテクニック③:ヒールフック
正しいかかとのかけ方を覚えよう

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足場が限られて高い位置に足を引っかけなければいけないケースで必要なテクニックが「ヒールフック」です。ヒールフックの上達のポイントはかかとの外側で引っかけること。ホールドに対してかかとを寝かせて、外側の面で引っかけるイメージになります。かかとを寝かせて引っかけなければいけない理由は2つあります。1つはつま先が上を向いてかかとの正面で引っかけると、"面"ではなく"点"で引っかけることになるので非常に滑りやすくなります。もう1つはかかとが正面を向いていると体を引き上げる時に、足が邪魔で体が入っていきません。また、骨盤が開いていなければかかとを高い位置に上げることが難しくなります。膝を開いてかかとを寝かせることで骨盤も開き、引き上げた時に体が入っていくのでスムーズに上がることができます。

5級攻略は目の前!
ジムや自宅で取り入れたい実践的なトレーニング

上記3つのテクニックを効率よく身につけるには、基礎的な体力、パワーを向上させることも重要です。ジムや自宅で出来るトレーニングメニューを紹介しましょう。

①ピラミッドトレーニング
5級を登るためには、まず6級を安定して登れる必要があります。そのためにはピラミッドトレーニングがおすすめです。最初に8級の壁からスタートして、7級→6級→7級→8級という順番で連続して5つの壁を登ります。この5課題を1セットとして、3セットを15分間で登るようにしましょう。最初の8級・7級は効率よく楽に登ることを意識し、6級は疲れてきた中でも登り切るフィジカルを強化。最後の7級・8級は疲労した状態でも落ちずに確実に登ることを意識します。慣れるまでは全て登るのは難しいかもしれませんが、15課題全完登が目標です。ジムトレーニングの最後の締めとしてやるようにしましょう。

②片足スクワット

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直立した状態からステップに片足で立ち上がり、その状態を5秒間キープして元の位置に戻ります。余裕がある人はつま先立ちでキープしてみましょう。2点支持を意識して背筋を伸ばし、片足でしっかりと軸を作ることがポイントです。これを左右10回ずつ繰り返しましょう。片足で立ち上がる脚力とバランス感覚を強化します。

③ニートゥーエルボー

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片足立ちの体勢になり、浮いた足を開いて反対側の腕を対角になるように開きます。この状態を5秒間キープして、今度は開いた腕と足を体の中央に引いて、肘と膝をくっつけます。この状態をまた5秒間キープします。これを左右で5回ずつ繰り返しましょう。片足立ちのバランス感覚を養い、腹筋のトレーニングにもなります。

今回の【基礎編】、【実践編】を通して、5級攻略に必要な体の使い方やムーブの起こし方を習得できたでしょうか。ただし、何より大切なのはケガをしないことです。無理をせず、休息をしっかり取って、自分のペースでボルダリングを楽しんでほしいですね。壁と向き合いトライを重ねると、また新たな"壁"が現れる。やればやるほど、うまくなる。そんなクライミングの魅力を存分に味わってください!

  • 伊東秀和
  • 伊東秀和(いとう・ひでかず)
    1976年、千葉県生まれ。2002年、03年のジャパンツアー年間王者。日本代表として11年まで世界選手権5大会に連続出場(リード種目)。現在は『伊東秀和クライミングスクール』を主宰し、多くの日本代表選手からユース世代、一般の方まで幅広く指導している。『スカイA』スポーツクライミング番組の解説でもおなじみ。

取材・文:篠幸彦
写真:森口鉄郎
撮影協力:PUMP2 KAWASAKI

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