楢﨑 明智インタビュー

日本人離れした体格が武器の次世代ホープ

明智選手がクライミングをしていて、一番嬉しい瞬間を教えてください。

「完登できた時ですね。特にできなかった課題ができた時。クライミングは組み合わせ次第で無限に課題を作れるので、ちょっと変えるだけで、達成感をその都度味わえるじゃないですか。それっていいなって思います。始めたての感覚がずっとあるというか。やめられないですね」

明智選手といえば186cmの長身、長い手足が特徴です。クライミングをする上で武器になりますか?

「かなりなりますね。手足が長い分、距離の遠い課題で有利に立ちやすいです。僕はスラブ(緩傾斜壁)が得意で、ゆっくりバランスを取って歩くような課題では、人より早く次の一手に届くこともできます。ただ、長身の選手って狭い動きが苦手になりがちで。背が高い分、弱点も生まれやすいです」

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写真/日本山岳・スポーツクライミング協会
ご自身の登りで注目してほしいポイントは?

「リーチがある中で、意外と狭い動きをこなしているところには注目してほしいですね。国内の大会だと、日本人に多い170cmくらいの選手が届く課題が主に作られているんですよ。僕はそれより15cm以上大きいので、窮屈な動きがどうしても増えてきます。ホールドの距離が遠くない課題の場合、だいたいの人が登れちゃってるから僕も登れて当然、ではなくて、意外と頑張ってる(笑)。地味ですけど、同じサイズの選手の中で見ると狭い動きがかなりできている方だと思います」

これまでの競技人生で最も印象に残っている大会、シーンは?

「去年のボルダリングワールドカップ(以下W杯)第1戦のマイリンゲン(スイス)大会ですね。準決勝でボコボコにされて、本当に何もできなかった。正直W杯に出る前は、世界で活躍している智君(兄・智亜)と一緒にセッションして勝つこともあったので、僕も運が良ければいけるんじゃないかって気持ちがありました。でも、あの大会はもうビビりましたね」

これがW杯か、みたいな。

「自国枠で2016年の加須大会に出場したことはあったんですけど、ただ目の前にある大会に出るくらいの感覚で、W杯だと意識して勝ちに行った大会は初めてで。ただ、この経験があったからこそ、第5戦のベイル(アメリカ)大会で表彰台に立つことができたんだと思います」

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写真/窪田美和子
先輩クライマーたちの活躍は、若い選手にとってプレッシャーですか? それとも心強い?

「両方ですね。引っ張ってくれる人たちがいるのはとても心強いです。でも反対に、多くの日本人選手がW杯で予選を通過しているのを見ていて、僕も『残んなきゃ』って感じるようになりました」

昨年はそのベイル大会2位の他、世界ユース選手権(オーストリア・インスブルック)でボルダリング2位、リード2位、3種目複合で優勝を果たすなど躍進を遂げました。振り返ってみて、どんなシーズンでしたか?

「自信がついたシーズンでしたね。W杯の準決勝に4回残ること、決勝に進出することが目標だったので、どちらも達成できました。ベイル大会、アジアユースでの2冠(ボルダリング、リード)と続き、世界ユースでも結果を残せました」

その世界ユース選手権では、日本代表が上位を席巻しました。日本のユース年代はなぜこんなに強いのでしょうか?

「上の世代の影響だと思います。(野口)啓代ちゃんはもちろんのこと、智君や(藤井)快君が一昨年あれだけの成績(ボルダリング年間ランキングで楢﨑智亜が1位、藤井快が2位)を残してくれたおかげで、ユース世代にも勝てる雰囲気が流れているんです。
まだまだ言える立場ではないですが、クライミングってかなりのメンタルスポーツだと思います。僕はフィジカル面だと緒方(良行)君や快君にまったく勝てないんですけど、その場の雰囲気で彼らより順位が勝ることがある。そういう側面で考えると、今の状況は日本に有利なんじゃないかなって思いますね。日本人は強いぞって空気が他の国からも出ていますし。
それと日本って、どこのジムに行っても、強くて様々なタイプのクライマーがいるので、お手本を間近で見ることができるのも大きいと思います」

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写真/永峰拓也
先輩クライマーたちの活躍は、若い選手にとってプレッシャーですか? それとも心強い?

「両方ですね。引っ張ってくれる人たちがいるのはとても心強いです。でも反対に、多くの日本人選手がW杯で予選を通過しているのを見ていて、僕も『残んなきゃ』って感じるようになりました」

ずっと智君の背中を追ってきた

明智選手は現在、スピード種目で日本ランキング1位(7秒37)です。実際に取り組んでみて、いかがですか?

「いや~、面白いですよ。今までずっとボルダリングをしてきた人たちからしたら正直、肯定的な意見は出ないかもしれない。僕も最初は不安だったんですが、実際にやってみたらすごく面白い。走り込んだりとか、飛んだり跳ねたりとか、今までやってこなかったトレーニングが求められるのも新鮮ですね」

面白いとは、具体的には?

「毎回同じコースを登って、自分との戦いでタイムを縮めていくっていうのが面白いんです。スタートの角度をちょっと変えたら速くなるんじゃないかとか、蹴る時の右足の角度をこうしたらとか、周囲と会話しながら取り組むのが楽しいですね」

反対に、難しいところは?

「同じコースであるがゆえに、必ず行き詰まるところが出てくることですかね。始めの方はちょっとムーブを変えるだけですぐタイムが伸びたんですけど、その後あまり伸びなくなってきて。最初に8秒の壁にぶち当たって、その時は7秒台も無理だと思っていました」

歳上の兄、智亜選手はどんなクライマーですか?

「努力の人ですね。一般的なイメージって、"運動神経が良くて才能がある"だと思うんです。本人も適当な感じがあるじゃないですか。"俺、頑張ってません"みたいな(笑)。でも、プロになってまもなくは勝てなかったり、僕には想像できないくらい辛い時期があったはずで。陰で努力してるんだなって感じています」

見えないところで努力されていると。

「すぐ調子に乗りますけどね(笑)」

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写真/永峰拓也
世界チャンピオンの兄がいるということは、同じ競技者としてどんな心境ですか?

「3歳年上で昔から何でもできた兄にはずっと勝っててほしい、自分より上の存在でいてほしいって思う気持ちが大きい反面、最近になって兄を超えたい欲がちょっとずつ芽生え始めてきて。競技者としては、もちろん強い選手を倒したいじゃないですか。だから複雑ですね(笑)」

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写真/永峰拓也
では、競技を離れた部分ではお二人はどんな兄弟でしょう?

「仲いいですね。普段はゲームの話をよくします。どうしてもクライミングの話題がしょっちゅうになるんですけど。それだけだと疲れちゃうので」

この春、高校を卒業します。卒業後の予定を教えてください。

「大学などに進学はせず、クライミング一筋で頑張りたいと思っています」

新メンバーとして、TEAM auに加入した心境を聞かせてください。

「これからが楽しみです。チームで活動する感じがワクワクしますね。ただし、もちろん結果も今より求められるようになると思うので、気を引き締めて頑張りたいです」

今シーズンの目標を教えてください。

「まずは、2月に行われるボルダリングジャパンカップで結果を残して日本代表に選ばれること。その上で、ユースレベルでは世界ユースでの3冠(ボルダリング、リード、コンバインド)とスピードの決勝進出。シニアレベルではW杯の決勝に複数回進出することと、世界選手権でボルダリング、コンバインドで表彰台に上がることです。もちろん狙えるのであれば、優勝も獲りに行きたいです」

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写真/永峰拓也
最後に、ファンのみなさんへメッセージをお願いします。

「ファンの応援はとてもありがたいですよね。大きな舞台だと、ここぞって場面でめちゃくちゃ声援が聞こえて、すごくモチベーションになります。今後も応援よろしくお願いします」

※このインタビューは2018年1月11日に収録されました。

2018年1月31日
撮影協力/NOBOROCK渋谷店

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