野中 生萌インタビュー

初優勝から1年半、世界一を目指して

昨年のワールドカップ(以下W杯)ではボルダリング年間ランキング4位。振り返ってみて、どんなシーズンでしたか?

「初戦から3位に入れて、コンスタントに表彰台には立てていたのですが、優勝はできなくて。やはり優勝したかったです。年間ランキングは2015年が3位、2016年が2位だったので、今年こそは1位を狙っていたのですが、それは叶わず。ただ、以前よりも表彰台に登る頻度は上がっているし、いい方向には進んでいるという感覚はありました」

2018年は世界選手権(オーストリア・インスブルック)が行われます。2016年のパリ大会ではボルダリングで2位でしたが、野中選手にとって世界選手権とはどんな大会ですか?

「本当に"別物"という感じがしますね。初めて出た2014年のミュンヘン大会でボコボコにされて(笑)。まったく歯が立たなかったイメージがあったんです。パリ大会では『今回こそは!』とかなり気合いを入れて臨んだんですけど、結果は2位。自分では良かったと思っています。今年こそ優勝を狙いたいです」

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写真/藤枝 隆介
W杯と世界選手権では雰囲気が違いますか?

「出場選手の優勝を狙いに行く気持ちや本気度が、1シーズンに何戦もあるW杯よりも格段に高い気がします」

競技人生で最も印象に残っている大会、シーンは?

「やっぱり初優勝した時ですね。2016年ボルダリングW杯ミュンヘン大会の決勝の記憶は鮮明に覚えています」

それは、なぜ?

「決勝の最終課題は誰も完登できなかったのですが、私だけが登れて。その時はゾーンに入ったというか。あの日は、1課題目でスタートポジションの違反でトライが無効になったり、流れはあまり良くなかったんです。それにもかかわらず、最終4課題目ではうまく自分をコントロールできている感覚があって、周りの声も聞こえるぐらいリラックスしているけれど、すごく集中している状態。自分がイメージした通りに体が動くんです。そのまま完登して、優勝。ものすごく印象に残っています」

約1年半前の大会ですが、その時のフィーリングがまだ鮮明に?

「覚えてますね。その後の試合で同じようにしたいと思っても、全然できないんですよね」

ゾーンに入った登りができる時は、普段と何が違うのでしょうか?

「わかんないんですよ、それが! わかったら、毎回入りたいんですけど(笑)」

最近は女性でクライミングする方も増えていますね。女性でもクライミングは楽しめますか?

「楽しめます!(断言)」

その理由は?

「スポーツの世界ではどちらかと言うと、男性の方が活躍しているイメージが強いですけど、クライミングはそうじゃないってことを自分たちも示せているのかなと思います。同じ課題でも、力のある男性が登れなくて女性の方がうまく登れたり、女性でも楽しめることがわかりやすく伝わるスポーツなんじゃないかと。そうやって女性が活躍できるスポーツは見てても、やっていても楽しいですね」

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写真/永峰拓也
昨年は女性限定クライミングイベントをプロデュースするなど、多方面で活躍されました。そうしたクライミングへの情熱・原動力は、どこから湧いてくるのですか?

「一番はやっぱりクライミングが楽しいから。自分が感じている楽しさをたくさんの人に知ってもらえたら嬉しい。そういった気持ちが、イベントのプロデュースもそうですけど、自分のクライミングを究めていきたいっていう原動力になっていますね」

「強いクライマー」と"オシャレ番長"

「強いクライマーになりたい」とよく発言されていますね。野中選手が考える「強いクライマー」とは?

「単純に言えば、高グレードの課題が登れたり、コンペで強いクライマーってことになるんでしょうけど、それだけじゃない。肉体的にも精神的にも強く、人間性もしっかりとしていて人からも尊敬される。そんなクライマーになりたいです」

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写真/永峰拓也
「強いクライマー」に近づいている実感はありますか?

「ありますね。年齢を重ねると競技者としては限界が出てくるので、今は競技でのパフォーマンス、クライミング力をどこまで上げられるかにフォーカスしています」

ご自身のクライミングの特徴、注目してほしいポイントは?

「日本人選手は比較的テクニックがある登りが得意なんですが、パワーを活かした力強い登りというのが私の特徴なので、注目してもらえればと思います」

あらためて、野中選手が考えるスポーツクライミングの魅力とは?

「目の前にある、そこにしかない課題と、それを登れた時の達成感ですね」

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写真/永峰拓也
そこにしかない課題とはどういう意味ですか?

「クライミングの課題には、まったく同じものってないんですよね。意図的に同じ課題を再現することはできますけど、トライする時の雰囲気、環境は一度きりですから。あとは個人競技だけど、周りとのコミュニケーションが多いこと。オブザベーションとかもそうで、競い合ってはいますが、壁を降りたら仲間みたいな」

今年、成人式を迎えられて、豊島区代表で成人の挨拶もされたとか。二十歳になって心境の変化はありますか?

「特にないです(笑)。私自身には変化はないんですけど、自分のことが記事になった時に『10代の~』みたいな見出しがなくなりましたね(笑)。10代って貴重だったんだなってあらためて思いました。まあ、でもしっかり大人にならなきゃな......と思います」

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写真/野中 生萌 Instagram
クライミング界のオシャレ番長との呼び声も高い野中選手ですが、ファッションへのこだわりを教えてください。

「いつのまにオシャレ番長に。うーん......やっぱりダサいのは、気分が乗らない!」

名言が出ましたね。

「ファッションがキマっていた方が、自分の気分も上がるし、観ているお客さんもその方がいいだろうなって」

特に気にかけているポイントは?

「髪ですね。今は黒ですけど、ここ数年ずっーと染め続けていて。赤、金、黄色、緑とかいろいろです。でも染め続けているおかげか、周りの人からもそういうイメージがついて、次の色を楽しみにしてくれたり。自分もそれが楽しくなるし」

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写真/野中 生萌 Instagram
次は何色に?

「考え中なんです、ムフフ」

今シーズンの目標を聞かせてください。

「一番は、世界選手権のボルダリングで優勝することです。あと、どの種目にどれほど出場できるかは決まっていないのですが、W杯で優勝すること。この2つですね」

年間ランキングの目標は定めていない?

「結果的に高ければいいなと思いますけど、そこまで意識はしていません。やっぱり世界選手権があるので、そこにしっかりとフォーカスしていきたいと考えています」

最後に、ファンのみなさんへメッセージをお願いします。

「いつも応援ありがとうございます。私の目標は変わることなく、強いクライマーになれるまで、ひたすら頑張ることです。引き続き、応援よろしくお願いします。あと次の髪色、何がいいですかね? オススメがあったら教えてください!(笑)」

※このインタビューは2018年1月11日に収録されました。

2018年1月31日
撮影協力/NOBOROCK渋谷店

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