楢﨑 智亜インタビュー

世界が認めたTOMOAスタイル

楢﨑選手が考えるスポーツクライミングの魅力とは?

「やっぱり『自由』なところが好きです。人によってムーブが違うし、課題も自由に作れるし、人それぞれのいい部分が出せるスポーツなので。競技者として見ると、クライミングはフィジカルとメンタルのバランスが取れていないと絶対に勝てないスポーツ。どんなに体の調子が良くても気持ちがダメな時は負けてしまうんですけど、そこが面白いんですよね」

競技人生で最も印象に残っている大会やシーンは?

「2016年の世界選手権(フランス・パリ)でしょうか。日本人で誰もできなかったこと(優勝)を達成して、パリの歓声に包まれていたあの瞬間は......気持ち良かったですね。あとは、2017年のワールドカップ(以下W杯)八王子大会も感慨深いです。負けた試合(2位)なんですが、観客のみなさんがすごく応援してくれたので、とにかくやっていて楽しかった」

写真
写真/藤枝隆介
楢﨑選手特有のダイナミックな登りには、海外のファンも多いと聞きます。あらためて、ご自身のクライミングスタイルとはどんなものですか?

「壁面でぴたっぴたっと止まるのではなく、ずっとリズムを取り続けて登って行く。リスクのある動きもするので、勇気がいるし、メンタルの状態によって大きく順位にも影響してしまうスタイルではあるんですけど。それを存分に発揮できたのが2016年シーズンで、突撃じゃないですが、ただひたすらガムシャラにやり切った。そんな自分のスタイルが好きで、ずっと貫いてきました。最近は『トモア・スタイル』とか『ニンジャ』とか、いろいろ言われるようになったので嬉しいですね」

2017年はW杯でボルダリング年間2位、リードでも2戦で準優勝を果たし、3種目複合では年間優勝を飾りました。振り返ると、どのようなシーズンでしたか?

「まず、『チャンピオン』という今まで感じたことのないプレッシャーがありました。優勝の翌年は重圧がのしかかると言われていた中で、僕自身は"かかんないだろ"と正直思っていたのですが、全然違って(苦笑)。これまで通りのリスクを覚悟したムーブを出し切れなかった場面もあり、けっこうきつかったですね。それにW杯の課題傾向も変わってきていて、2016年には多かった(自身が得意な)コーディネーション系やランジが決め手になる課題が減り、言ってしまえば誰でも登れるようなタイプの課題が増えたことで、勝ち切れない大会もありました」

写真
写真/永峰拓也
それでも結果は上々だったように思えますが。

「最終的には良かったと考えています。でも、ボルダーも最後戦まで年間4位になる可能性がありましたからね。1位から4位へのランクダウンって、自分の中でも一般のイメージ的にも"落ちたな"という印象が残ると思うんです。そこでなんとか2位に食い込めたから、"耐え切ったな"って。リードに関しては、僕がしばらくW杯に出場していなかった間に他のボルダラーたちが上位に進出していたので、そろそろ結果を出さなければ流れが良くないなと感じていました。準優勝2回という思った以上の成績を残せて、かなり自信になりましたね」

リードはボルダリングに比べれば、まだ馴染みのないファンも多い種目だと思います。どういった点に注目すると面白いでしょうか?

「一番高くまで上がったヤツが勝つ、という単純明快な種目なので、見ていてわかりやすいと思います。また、だいたいの選手が失敗して落ちるというよりも力を出し切って落ちるので、応援にも熱が入るんじゃないかと」

写真
写真/永峰拓也
2018年は世界選手権(オーストリア・インスブルック)が開催されます。前回のパリで頂点に立った楢﨑選手にとって、どんな大会ですか?

「2年に1度のスポーツクライミング界では一番大きな大会で、そこで勝つのは非常に名誉なことです。僕自身、かなり自信に繋がりました。W杯1戦で優勝するのとはまったく価値が違うと実感しましたね」

まだまだ明智には、負けません!

楢﨑選手といえば、やはり驚異的な身体能力に注目が集まります。体を維持するため、さらに進化させていくために、どのようなトレーニングに取り組んでいるのですか?

「シーズンが終わってから12月後半までは、ずっと体力作り。ダッシュとかジャンプとか、基礎的な身体能力を上げるトレーニングを行っています。そこでクライミングにいらない筋肉もつくので、1月以降はクライミングをたくさんして削ぎ落としていくようなイメージですね。加えて(パーソナルトレーナーの)千葉啓史さんとのトレーニングで、まだ意識できていない体の部位や使えていない動き方などの改良にも取り組んでいます。例えば僕の登りでは背骨の動きが重要なんですが、そこにも現状で柔軟性が高い部分と硬い部分があって、その硬い部分をうまく使えるようになれば、いろんな動きのパターンが増えるようになるわけです」

写真
写真/楢﨑 智亜 Instagram
スポーツクライミングを今以上にメジャーなスポーツへと成長させていくには、どんなことが必要だと考えていますか?

「まだ大会のルールを理解できていない方も多いと思うので、もっとアピールしていきたいですね。そのためにも、僕たちトップ選手が活躍し続けることで、こうしたTEAM auでの活動やメディアに出演するような機会が増えていくのも重要だと考えています。だから、頑張らなきゃなって」

写真
写真/永峰拓也
このたび3歳下の弟、楢﨑明智選手がTEAM auに新加入しました。明智選手はどんなクライマー?

「みんなのイメージ通り、まず、デカいんですよ(笑)。でも、それだけじゃない。例えば外国人の体格がいい選手って、体重も重くて指の力が弱い傾向にあるんですけど、あいつは軽いからホールドを持てますし、何より足の使い方がめっちゃうまい。繊細な動きが得意で、重心移動もすごくスムーズなんです。フィジカル面の安定感がもっと出てきたら、手がつけられなくなっちゃうんじゃないかって」

兄弟仲はとっても良いそうですが、W杯などの舞台で「競い合う」環境になっても関係は変わらない?

「嬉しいですね、追いついてきてくれたのが。最近は前よりも一緒にトレーニングしていますし、とにかく楽しいです。あいつも春に高校を卒業したら、プロとしてやってくのかな。これからもっと一緒に練習できますね。たまに3時間くらい電話してることもあるんですよ。クライミングのことはもちろん、ゲームだったり遊びの話を時間も忘れて(笑)」

具体的にコンペにおける目標地点はありますか?

「一番は世界選手権の優勝です。コンバインド(3種目複合)も行われるかもしれないと言われているので、そこでも優勝を狙っていきたいです。ボルダーとリードは当然ですけど、スピードでも6秒台、出したいっすね。今、明智と2人で日本最速を争っているので、そのまま一緒に上がって行きたいな、ちょっと俺が上で(笑)」

写真
写真/永峰拓也
最後に、ファンのみなさんへメッセージをお願いします。

「昨年は大会中や練習中のケガで少し落ちていたところもありましたが、そんな時にもずっと応援をしてくれていて、そのおかげで戦い続けることができました。これからも頑張っていくので、応援よろしくお願いします」

※このインタビューは2018年1月11日に収録されました。

2018年1月31日
撮影協力/NOBOROCK渋谷店

powered by climbers